ニュース、あるいは刑事もののドラマなどで、「警視庁」と「警察庁」という言葉を聞くことがあると思います。

どちらも同じ警察の組織ではありますが。
行政機関の位置づけとしては、両者は全く異なる組織です。

ご存じでない方もいらっしゃるでしょう。

両者の違いを簡単に言ってしまうと、

  • 警視庁:東京都を管轄する警察組織
  • 警察庁:全国の警察署を指揮監督する組織

となります。

基本的に、警察庁は警視庁を指揮監督する立場にあります。
なので、どちらが上かと言うと、一応は警察庁の方が上と言えます。

そのため、採用や階級、日々の業務にも違いが出てきます。

実際、私は就職のときに国家公務員試験を受けて、官庁訪問で警察庁を訪れたことがあり、色々とお話を聞く機会がありました。

そのときの体験も交え、警視庁と警察庁の違いを分かりやすく説明しました。

警視庁とは?

警視庁とは、東京都の警察本部のことです。

警察本部は、各都道府県の県庁所在地に置かれ、その地域内の複数の警察署をまとめる警察組織です。

例えば、東京都にも、赤坂警察署や新宿警察署、八王子警察署や府中警察署といった、たくさんの警察署がありますよね。
これらをまとめているのが、警視庁ということになります。

また、東京都以外にも、大阪府警や神奈川県警、京都府警や北海道警など、全ての都道府県に警察本部があります。

警視庁は、これらの警察本部と同じ立場にあります。
言ってみれば、「東京都警」というようなものです。

あくまで、各都道府県の警察本部と同じで、地方の行政機関の1つということになります。

なので、警視庁といえど、基本的な業務は、他の道府県警察と同じになります。
具体的には、事件や事故の捜査したり、犯罪者を逮捕したりと、東京都内の治安維持に努めます。
私たちが普通にイメージする警察の仕事と変わりはありません。

ただし、警視庁は日本の首都の東京を管轄しているので、他の道府県警察とは異なり、重要な役割を担うことになります。

例えば、国会や内閣府、駐日大使館などは東京にあります。
天皇陛下や皇族の居住地である皇居も東京にありますよね。

そのため、日本の統治に関わるような機関を警備し、日本にとって要人といえる人物の警護をすることが多々あるということです。

基本的には、他の道府県の警察本部と同じ位置づけではありますが、警視庁は日本の首都を管轄する警察本部ということで、他とは違った名称となり、特別な警察署になるというわけです。

なお、警視庁の職員の採用は、もちろん警視庁が独自に行っており、採用された職員は地方公務員となります。

警察庁とは?

すでに述べた通り、警視庁は地方の行政組織です。

これに対して、警察庁は国の行政機関となります。

具体的には、内閣府の外局である国家公安委員会の管理下にある組織です。

警察庁は、全国の警察組織を指揮・監督する立場にあります。
全国の警察の仕組みを作ったり、調整したりする行政機関です。
警察組織の規則を作るのはもちろんですが、犯罪に関する法律の立案を行うこともあります。

基本的に、犯罪を捜査したり、犯罪者を逮捕したりというようなことは行いません。
日本の治安維持のために、全国の警察を運営するのが主な仕事となります。

いわば、警察の官僚機構といったところです。

警察庁の職員の採用は、国が行います。
そのため、警察庁の職員は国家公務員となります。

警察庁に就職するには、国家公務員総合職試験や国家公務員事務職試験に合格し、官庁訪問を経て、内定をもらうという形になります。

これは、官僚になるのと同じです。
つまりが、財務省や経済産業省、厚生労働省や文部科学省などに就職するのと同じということです。

国家公務員試験に合格した人たちは、就職する官庁を選びます。
合格しても、必ずしも希望する官庁に就職できるわけではなく、一般の企業と同じように内定をもらわなければいけません。
国家公務員の受験生たちが内定→就職を希望する官庁の1つとして、警察庁があるというわけです。

警察庁は、国の行政組織としての位置づけは、いわゆる12省庁と同列ではありませんが、就職するには全く同じ過程をふまないといけないということです。

実際、警察庁は、国家公務員を目指す人たちの間でも人気があり、就職するのが難しい官庁です。
現在でも、国家公務員総合職試験の合格者だと、警察庁の採用人数の半分くらいが、東大出身者ですので。
国家公務員事務職試験の合格者の入庁者となると、出身大学の顔ぶれは色とりどりとなりますが。

ここで、総合職と一般職の違いを説明すると、簡単に言ってしまえば、出世のスピードの違いです。
総合職はキャリア組、一般職は準キャリア組と呼ばれたりします。

警察庁の場合、総合職で入庁すると、階級は警部補からスタートします。
一般職は、巡査部長からのスタートとなります。
そのため、出世のスピードも、最終的な階級も違ってくるというわけです。

警察庁のトップの警察庁長官は、ほぼ東大出身者しかなれません。
入庁すると、他の省庁と同じように過酷な出世争いが待ち受けています。
出世争いから外れると、そこで階級が定まり、しばらくして天下りしていく…

このようなシステムは、現在はかなり変わってきていますが、基本的な仕組みとしてはまだ根強く残っているようです。

また、一般の地方公務員として各都道府県の警察署に就職した場合は、階級は巡査から始まります。
この場合、退職するときの最終的な階級は、大体が警部補か警部までというところです。
警察庁に国家公務員試験総合職で入庁した場合のスタート地点と、あまり変わらないということになります。

もちろん、そもそも求められる役割が違うというのはありますが。
出世や階級という点からすると、キャリア組とノンキャリア組では、これだけ大きな違いがあるというわけです。

なお、総合職でも一般職でも、入庁してから少なくとも1年は、各都道府県の警察署で警部補、あるいは巡査部長として勤務し、現場の仕事をすることになっているようです。

警察の階級を図に表すと?

今まで、警部補や巡査部長といった警察の階級を表す言葉を使ってきましたが、よく分からないという方もいらっしゃると思います。

そこで、以下に警察の階級を図にしました。
ご参照くださいませ。

現在は、警視正以上の階級は、地方公務員として採用されても、国家公務員となります。

警視正から警視総監はそれぞれ定員があります。

警視長は各都道府県の小規模の警察の署長クラスといったところ。

警視監は、各都道府県の本部長や警察庁での局長クラス。
この階級から、警視庁のトップである警視総監や警察庁のトップである警察庁長官が選ばれます。

警察官のほとんどは巡査から警部補までの階級で、全体の約9割を占めます。
なので、その上を目指すとなると、かなりの狭き門となります。

キャリア組だと順調にいけば、通過点というところですが。
現場からのたたき上げだと、優秀な人物でないと、なかなか就任できない階級となります。

官庁訪問での警察庁の雰囲気は?

私が就職するとき、国家公務員試験を受けて官庁訪問をしたことがあります。
今から20年くらい前のことです。
警察庁が第1志望でした。

当時は、国家公務員Ⅰ種試験とⅡ種試験がありました。
Ⅰ種が現在の総合職、Ⅱ種が現在の一般職に相当します。

Ⅰ種試験を受けて警察庁を訪問したときは、大学生の顔ぶれは、東大生と京大生が半分近くを占め、その他、旧帝大や早稲田、慶応、上智、関関同立やGMARCHの学生が多かったです。

警察庁と聞くと、かなり固い感じがしますよね。
ところが、意外にも、警察庁はとても明るい雰囲気でした。

もちろん、面接は真剣そのものですが、待合室で警察庁の先輩の方々が学生たちに気さくに話しかけてくれて、あちこちで笑いが起きるくらいです。
官庁訪問をしている学生たちの話によると、警察庁は一番和やかな省庁ということでした。

この明るい雰囲気は、警察庁の職員の方々が意識して作っていたようです。
ある1人の職員の方の話では、伝統的にこのような形式が続いているとのこと。
かなり前から和やかなムードで学生を迎えようという方針があったようで、それがずっと受け継がれてきたそうです。

ただ、先輩職員の方々は、自分たちの仕事時間を割いて、訪問してくる学生たちに接しているようでした。
とある女性の職員は、同期の男性の職員に「ああ~、このあと、私の机にある山積みの書類のことを考えるとブルーになる」ともらしていましたからね(^^;)

また、入庁してから1年間は、各都道府県の警察署勤務となり、そこでの現場での体験なども色々聞きました。
犯罪の捜査なども当然するわけなので、中にはかなり怖い話もありました。

あと、柔道部で黒帯持ちの学生がいて、そういった武道で段を持っているなら、現場の警察職員にアピールした方がよいという話もありました。
やはり、現場では若いキャリア組の警察職員は歓迎されないこともあるそうです。

そこで、武道で段を持っているとなると、現場の職員さんたちの見る目が変わることもあるとのこと。
とにかく、現場の警察官とうまくやっていくためには、色々な引き出しはあった方がよいということですね。

逆に、現場の職員さんたちと仲良くなり、霞ヶ関に異動となって別れるときは、泣いてしまったという警察庁の先輩職員もいました。
同期の警察庁の人にツッコまれていましたが(笑)

キャリア組でも温かく迎えてくれるところもあるよ~ということでした。

結局、私は内定をもらえずに、民間企業に就職しましたが。
単純に試験の成績がよくなかったのでしょう。

警察庁は、特に試験の成績と学歴を重視する傾向にあるようです。

まとめ

以上が警視庁と警察庁の違いとなりますが、簡単にまとめると、以下のようになります。

警視庁

  • 東京都を管轄する警察署(警察本部)
  • 地方の行政機関
  • 事件の捜査を行い、犯罪者を逮捕するのが主な仕事
  • 職員は基本的に地方公務員

警察庁

  • 全国の警察組織をまとめる官僚機構
  • 国の行政機関
  • 全国の警察組織を運営し、規則や法律を立案するのが主な仕事
  • 職員は基本的に国家公務員

警察庁は全国の警察組織を指揮・監督するので、警視庁の上部機関となります。

ただし、警察庁のトップである警察庁長官と、警視庁のトップである警視総監に関しては、どちらが上かというのは、一概には言えません。
どちらのポストも、ほぼ東京大学出身者ばかりです。

警察庁長官と警視総監はそもそもの役割が違いますが、一般的には、どちらも最上級の階級で、あがりのポストと認識されているようです。