てんびん座といえば、現在は黄道12星座の一つに数えられ、星占いでも9月23日~10月23日に生まれた方の星座として知られていますね。
その一方で…
てんびん座の神話をご存じでしょうか。
意外と知らないという方が多いのではないでしょうか。
てんびん座生まれでも知らないという方も多いと思います。
今回はてんびん座の神話をご紹介します。
物語形式をはさみながら詳しく説明していますので、ぜひご参照ください。
てんびん座の物語
てんびん座は、アストライアーという女神が持っていた天秤が天に掲げられて星座になったものとされています。
アストライアーは一般的には正義の女神とされていますが、無邪気や純潔を象徴する女神とも言われています。
アストライアーの天秤が星座になった背景には、人間の堕落に失望した神々の姿があります。
人間が堕落していく過程は以下のように描かれています。
黄金の時代
人間が世界に住むようになった最初の時代。
人間の間に罪悪といったものはなく、幸福に包まれていた時代。
法律や刑罰といったものがなく、人間が自ら正義と真実を尊重しており、人々の間に争いなどもありませんでした。
剣や槍や兜といった争いの道具もありませんでした。
大地は豊かで、人間が苦労して耕さなくとも、あらゆる作物を産んでくれました。
木も草花も、種をまかなくても育ちました。
川にはミルクやぶどう酒がひとりでに流れていました。
人間はこれらの恵みを全て手に入れることができた時代でした。
銀の時代
黄金の時代の後にやってきたのが銀の時代です。
黄金の時代は春しかありませんでしたが、銀の時代に大神ゼウスが春を縮めて1年を春・夏・秋・冬の4つの季節に分けてしまいました。
そのため、人間は初めて厳しい夏の暑さや冬の寒さに耐えなければなりませんでした。
人間の住みかもこの時代の最初は洞窟でしたが、やがて森の中の葉っぱにおおわれた隠れ家に移り、さらに人間が自ら作った小屋に住むようになりました。
また、農作物も人間が栽培をしなければならなくなりました。
人間が自ら種まきをし、牛にすきを引かせて大地を耕しました。
青銅の時代
銀の時代の後に続いたのが青銅の時代です。
この時代に人間の気性はかなり荒くなってしまいました。
そのため、人々が武器を持って争うことも多くなりました。
ただ、それでも最も悪い時代ではありませんでした。
鉄の時代
銀の時代に続いてやってきたのが、鉄の時代です。
世界が荒廃した最も悪い時代とされます。
人間の間には真実や正義、謙虚といった美徳が失われました。
それらに変わって、世の中には利欲や欺瞞、暴力といった罪悪がはびこりました。
人々は協力して大地を耕していましたが、分割して私有の財産にしてしまいました。
しかも、大地から産まれるものだけでは満足できなくなり、大地の奥の方まで探っていって、金属の鉱石を掘り出すという行為にまで出ました。
こららの金属から武器が作られ、やがて戦争が起きました。
人々はお互いに信じあうことはなくなり、安心して暮らすことができなくなりました。
友人であっても、兄妹・姉妹であっても、夫婦であっても、親子であっても…
以上のように人間は落ちぶれていったとされています。
人間の堕落していく様子を見て、神々は失望し地上を見捨てて天界に帰っていきました。
その中でただ一人地上に残ったのが、アストライアーです。
アストライアーは争いのある人々のそれぞれの主張を自分の天秤ではかることによって、誰が正しいかを判断し問題を解決していました。
そして、地上において人間に対して懸命に正義を説きつづけました。
しかし、彼女の想いはむなしく、かなうことはありませんでした。
そのため、遂にはアストライアーも地上を立ち去ってしまいます。
こうしてアストライアーの持っていた天秤は必要のないものとなり、天空にかかげられて星座になったとされています。
てんびん座の豆知識
今では黄道十二星座の1つにもなっているてんびん座ですが、ギリシア時代にはさそり座のハサミの部分とされていたという説があります。
てんびん座の物語もローマ時代に成立したという考えがあります。
また、現在の秋分点はおとめ座にありますが、数千年前にはてんびん座にありました。
そのため、秋分の日には太陽がてんびん座の中に位置し、昼と夜の長さを等しく分けていたことになります。
こうした理由から、紀元前のはるか昔には、てんびん座は昼夜の長さを等しくはかる天秤と考えられました。
さらに、女神アストライアーはおとめ座のモデルであるという説もあります。
おとめ座のモデルとしては、他にも豊穣の女神であるデーメーテール、あるいはその娘のペルセポネーという説もあり、統一されていません。
ちなみに、デーメーテールとはクロノスとレアーの娘で、ゼウスのお姉さんに当たる存在です。
現在もオリュンポス12神の一柱に数えられます。