「有終の美を飾る」という慣用句があります。
物事を最後までやり遂げ、素晴らしい成果をあげることを意味する言葉です。
キャリアなどの一つの節目を美しく終える様子を表し、スポーツやビジネス、またはその場でのスピーチでもよく使われる表現です。
この記事では、「有終の美を飾る」の意味と由来、例文から類義語や英語表現まで詳しく紹介しています。
有終の美を飾るの意味は?
「有終の美を飾る」は「ゆうしゅうのびをかざる」と読みます。
物事を最後まで立派にやり遂げ、終わり良く成功や成果を収めることを表す表現です。
あるプロジェクトや活動、キャリアなどが最終段階においても高い水準を保ち、美しく終わることを意味し、終盤における成功や充実を称賛する際に用いられます。
「有終の美を飾る」のそれぞれの語句の意味は
- 「有終」とは、始まりから終わりまで責任を持って行いきることを示します
- 「美」はそのまま「美しい」という意味で、最終的な行為や結果が美しいと認められるということです
- 加えて、「飾る」は美しさをさらに引き立てる、装飾するという意味を含みます
となります。
そこから、一貫して物事を成し遂げ、見事な成果を収めることを意味します。
「有終の美を飾る」は、終局において素晴らしい結果や完遂を称える際によく用いられます。
例えば、スポーツ選手の引退や職業生活の終了、学問の場での卒業など、大切な節目における行為や成果を讃えるのに適しています。
有終の美を飾るの由来は?
「有終の美を飾る」は、中国の古典「詩経(しきょう)」に起源を持ちます。
詩経は、紀元前9世紀から紀元前7世紀の間に成立した詩集です。
そこに「初め有らざるなし、こと鮮なし(すくなし)」という一節があります。
物事を始めることは誰にでもできるが、それを立派にやり遂げることは簡単ではないという意味です。
この一節から「有終の美を飾る」という表現が生まれ、「最後まで責任を持って物事を完成させることが、真に価値のある終わり方である」という現代にも通じるメッセージに発展したというわけです。
有終の美を飾るの例文をご紹介
「有終の美を飾る」の使い方として、例文を5つ紹介します。
- 長年プロ野球で活躍した選手が、最後の打席でホームランを打ち、感動的な引退試合で有終の美を飾った。
- 彼は長年にわたるキャリアの最後に、プロジェクトを成功に導き、有終の美を飾った。
- 大学院の最後の研究発表で最優秀賞を逃し、有終の美を飾ることはできなかったが、研究に打ち込んだ学生生活は、自分の成長と大きな自信を育んでくれた。
- 彼はサッカー部で長い間キャプテンを務め、引退前の最後の試合もリーダーとして勝利を導き、見事に有終の美を飾った。
- この度、退職に際して皆様からいただいた温かい言葉と感謝の気持ちに心から感謝し、これによって有終の美を飾ることができたことを大変嬉しく思います。
以上のように、「有終の美を飾る」という表現は、物事が美しく完結すること、特に何かを成し遂げたり、一区切りつけたりする際にその成果や達成を讃えるポジティブな意味合いで用いられます。
ただし、この表現を使う際には、その適用するシーンに注意が必要です。
一般的には、キャリアの最終段階での成功や、長期にわたるプロジェクトの完了、スポーツでの引退など、努力の末に得られた成果を称える文脈で使われることが多いです。
これらの状況では、努力や過程を経て得た「終わりの美しさ」を讃えることが適切であり、感動や敬意を表すのにふさわしい言葉となります。
しかし、人の死や結婚式のような場面で「有終の美を飾る」という言葉を使うのは避けるべきです。
人の死は、その人の人生そのものが終わりを迎えることであり、達成や成果を称える文脈とは異なるため、この表現を使うことは不適切とされます。
また、結婚式は人生の新たな始まりを祝う場であり、終わりを示唆するような表現は、その祝福の気持ちにそぐわないため、こちらも適していないとされています。
したがって、「有終の美を飾る」という表現を用いる際は、その場面や文脈が、努力や過程の末に得られた成果や達成を讃えるものであるかどうかを慎重に考え、適切な状況で使うことが大切です。
有終の美を飾るの類義語をご紹介
「有終の美を飾る」の類義語として、以下の3つを紹介します。
立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)
立ち去る際に問題やトラブルを残さないようにすることを意味し、有終の美を飾ることと同じく、最後まで責任を持って事を終えることを象徴しています。
掉尾を飾る(ちょうびをかざる)
物事の終わりに際して素晴らしい仕上げをすることを意味し、行為や一連の出来事を見事に締めくくる様子を示しています。
終わりよければ全てよし(おわりよければすべてよし)
最終的な結末が良ければ、それまでの過程におけるどんな困難も受け入れられるとする考え方を表しています。
全体の評価が最終的な結果によって左右されるという意味を持ちます。
有終の美を飾るは、物事を始めから終わりまで貫徹し、最後に美しい結果や完成度を達成することに重きを置いているので、少しニュアンスは異なります。
有終の美を飾るの対義語をご紹介
「有終の美を飾る」と反対の意味を持つ表現を以下に3つ紹介します。
竜頭蛇尾(りゅうとうだび)
物事が始まりは勢い良くスタートするものの、終わりに向かって力尽きてしまう様子を表す表現です。
文字通り、龍の頭のように強く始まりながら蛇の尾のように弱々しく終わることを意味します。
尻切れとんぼ(しりきれとんぼ)
物事が中途半端に終わってしまい、結末が不満足な状態を指す言葉です。
途中で終わってしまうことから、完結しない結果や未完成の状態を表しています。
仏作って魂入れず(ほとけつくってたましいいれず)
形だけ作り上げても中身や本質が伴わないことを指します。
仏像を作りながら、それを本物の仏とする魂(本質的な価値や意味)を吹き込まないことに例えられています。
出来上がっても、肝心なものが抜けてしまっていることを意味します。
有終の美を飾るの英語表現をご紹介
「有終の美を飾る」の英語表現としては、“finish(end) successfully”、“end on a high note”などがあげられます。
successfullyは「成功裏に」、on a high noteは「好調に」というような意味で、動詞と組み合わせることによって「有終の美を飾る」という意味に近づけることができます。
例文をあげると
(長年の努力の末、彼女はキャリアを有終の美を飾る形で終え、成果の遺産を残すことができた。)
(チームは最後の試合に勝利することで、シーズンを有終の美を飾ることを目指しました。)
となります。
まとめ
「有終の美を飾る」とは、何かを最後まで立派にやり遂げ、素晴らしい結果や成果を収めることを意味します。
スポーツやビジネス、あるいはスピーチなどの様々なシーンで用いられる表現ですが、人の死や結婚式など、一部のシチュエーションでは不適切とされています。
人生において、何事も始めはやる気満々であっても、最後までやり遂げるのは難しいことが多いでしょう。
ですが、持続的な努力を通じて納得のいく結果を出すことが望ましいのは言うまでもありません、
終わり方一つで全体の印象が変わり得るため、どんな局面でも最善を尽くし、有終の美を飾るよう努めたいものですね、