「三十六計逃げるに如かず」ということわざがあります。
そのままの言葉通り、逃げるのが最もよいという意味です。
この記事では、「三十六計逃げるに如かず」の意味と由来、例文から類義語や対義語まで詳しく紹介しています。
三十六計逃げるに如かずの意味は?
「三十六計逃げるに如かず」は「さんじゅうろっけいにげるにしかず」と読みます。
意味は「最良の策は逃げることである」となります。
直接的な対決が不利または無益である場合、戦況を悪化させることなく安全を確保するために、撤退または逃走することが最も賢明な選択であるとする戦略的な思想を表しています。
三十六計逃げるに如かずの由来は?
「三十六計逃げるに如かず」という言葉は、中国の南朝斉の時代に記された「南斉書」の王敬則伝に起源を持ちます。
そこには
敬則曰、「壇公三十六策、走是上計」
という記述があります。
日本語に訳すと「王敬則は言った、『檀公の三十六策の中で、逃げることが最上の策である』」となります。
このエピソードの背景には、南北朝時代の中国で、南朝の将軍王敬則が反乱を起こし、斉の蕭道成を攻撃した出来事があります。
蕭道成とその息子が逃げたと聞いた王敬則は、「檀道済の著した兵法においても、逃げることが最も優れた策である」と述べ、逃げた斉の王族を皮肉ったのです。
この表現は元々、敵前逃亡を選ぶ者を侮蔑する意味で使われましたが、時が経つにつれて、逃げること自体を賢明な選択と見なす意味で用いられるようになりました。
「兵法三十六計」は、南北朝時代の南朝宋の檀道済によって書かれたとされる兵法の集大成で、戦術を六つのカテゴリーに分けた三十六の計略を紹介しています。
その中の一つ、「走為上」は、勝算がない場合には戦わずに逃げることで損害を最小限に抑えるべきだと説くものです。
少し複雑に感じるかもしれませんが、簡単に言うと、「南斉書」の「王敬則伝」が「兵法三十六計」を引用しています。
その中でも特に逃げることが最優先の策であると皮肉った記述が由来となっているわけです。
「兵法三十六計」自体が背景にありますが、より具体的には、王敬則のエピソードが直接的な起源と言えるでしょう。
三十六計逃げるに如かずの使い方をご紹介
「三十六計逃げるに如かず」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- プロジェクトが予想以上に困難になったとき、リーダーは三十六計逃げるに如かずと判断し、一時撤退を選択した。
- 競争が激化する市場で、新規参入者が巨大企業と直接競合することは避けた方が良い。時には三十六計逃げるに如かずと考え、ニッチ市場に焦点を当てる戦略が賢明である。
- 三十六計逃げるに如かずというように、話し合いが激化し、感情的な対立が起こりそうになったので、その場を離れることにした。
- 投資で大きな損失を避けるためには、市場の動向を正確に読むことが重要だ。時には三十六計逃げるに如かずと判断し、早期に撤退する勇気も必要になる。
- サッカーの試合で、相手チームの圧倒的な攻撃に直面したとき、コーチは三十六計逃げるに如かずと戦術を変更し、守備を固めてカウンター攻撃に切り替えた。
三十六計逃げるに如かずの類義語をご紹介
「三十六計逃げるに如かず」に似た意味を持つ言葉として、「逃げるが勝ち」があげられます。
「三十六計逃げるに如かず」と同様に、直面している困難や危険な状況から逃れることが、最も賢明な選択であるという意味を持つ日本のことわざです。
無理に戦い続けるよりも、損害を最小限に抑えるために適切な時に撤退することの重要性を強調しています。
具体的には、対立やトラブルがエスカレートする前に、その場から離れることで問題を回避し、長期的な視点で見た場合に最終的な利益を得ることができるという考え方を示しています。
三十六計逃げるに如かずの対義語をご紹介
「三十六計逃げるに如かず」の直接的な対義語はというのはないようです。
ここでは、直接的な対義語ではないですが、「三十六計逃げるに如かず」の考え方とは反対の立場を示す表現を紹介します。
当たって砕けろ(あたってくだけろ)
どんなに困難な状況でも果敢に挑戦し、最後まであきらめない姿勢を表します。
失敗を恐れずに挑戦することの大切さを強調しており、逃げることを選ぶよりも、直面する困難に立ち向かう勇気を持つべきだという意味が込められています。
肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ)
大きな犠牲を払ってでも目的を達成する覚悟を示す言葉です。
自らの損失を顧みず、目標達成のためには厳しい決断を下すことの重要性を説いています。
逃げ出すのではなく、困難に立ち向かう決意を表す表現です。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそうかぶせもあれ)
自己の安全や利益を顧みずに大きなリスクを冒すことで、逆境を乗り越え、成功を収めることができるという意味のことわざです。
逃げるのではなく、自らを犠牲にしてでも大きな成果を目指すべきだと教えています。
まとめ
三十六計逃げるに如かずは、困難な状況からは逃げるのが賢明な選択であることを教えてくれます。
どんなに勇敢に戦ったり、困難に立ち向かうことが重要だとしても、解決不可能なときには逃げることが最善の策となることもあります。
この古い教えは、時と場合によっては、戦いから離れることが、実は最も賢い選択であることを思い出させてくれます。
状況に応じて、立ち向かうできか、逃げるべきか、しっかり見極めるようにしたいものですね。