「一陽来復(いちようらいふく)」という四字熟語があります。

冬の後に春が訪れることを意味し、辛い時期の後に幸運がやってくる様子を表しています。

この記事では、「一陽来復」の意味と、使い方から類義語や対義語まで詳しく紹介しています。

一陽来復の意味は?

「一陽来復」とは、中国の古典「易経」に由来する成語で、文字通りには「一つの陽が再びやって来る」という意味です。

これは、長い冬の後に春が訪れることを象徴し、比喩的には困難や逆境の後に再び好機や希望が訪れることを意味します。

一般的には、暗い時期の後の回復や再生を表す表現として用いられます。

一陽来復の由来は?

「一陽来復」という表現は、古代中国の周王朝(約紀元前11世紀から紀元前3世紀)の時代に書かれた「易経」に起源を持ちます。

「易経」に「地雷復」という章があり、そこに「五月、姤卦に陰が生じ、七爻を経て陽が戻る」という記述があります。

これを現代語に訳すと、「(旧暦の)5月、夏至に陰が始まり、7ヶ月後の冬至に陽が戻る」という意味になります。

「一陽来復」という言葉は、この部分から生まれました。

夏至を過ぎると夜(陰)が徐々に長くなり、夏至が一年で最も昼(陽)が長く夜(陰)が短い日であること、そして7ヶ月後の冬至には昼(陽)の時間が再び長くなり始めることを示しています。

冬至は一年で最も昼が短く夜が長い日ですよね。

この理論に基づき、「一陽来復」は冬(陰)が終わり春や夏(陽)が訪れること、すなわち陰の時期を経て陽の時期が巡ってくることを意味し、困難な時期(陰)が過ぎ去り幸運(陽)が訪れることを象徴するようになりました。

易経の基本的な概念である陰陽について説明すると、あらゆる事情の背後にはの支配する二つの対立する力があり、宇宙のすべてのものを形作っていると考えられています。

陽は積極的で強力な要素を、陰は消極的で柔らかな要素を表します。

例えば、自然界では太陽と月、天と地、昼と夜、火と水、夏と冬がそれぞれ陽と陰の関係にあります。

人間の世界では、男性と女性、親と子、君主と臣下がこの関係を示しています。

また、動と静、剛と柔、大と小などの性質も陰陽の例として挙げられます。

一陽来復の例文をご紹介

続いて、「一陽来復」の使い方として、5つの例文を紹介します。

  • 冬の終わりに、雪解けと共に花が咲き始め、自然界に春が訪れる。この季節の変わり目は、一陽来復の美しい例である。
  • しばらく不運が続いたが、一陽来復の時が近づいているはずだ。そろそろ良い転機が訪れるだろう。
  • 祖母の病状が徐々に良くなり始め、笑顔も見せるようになった。ようやく一陽来復の兆しが見えてきた。
  • 企業の経営危機を乗り越え、黒字に転換したとき、社長は「これぞ一陽来復」と社員に宣言した。
  • 彼女は大学受験に失敗した後、一年間浪人することを決め、来年こそは一陽来復を願うことにした。

一陽来復の類義語をご紹介

「一陽来復」によく似た意味を持つ表現として、以下の3つを紹介します。

冬来りなば春遠からじ(ふゆきたりなばはるとおからじ)

「冬が来れば春は遠くない」という意味で、どんなに厳しい冬や困難な時期も過ぎ去れば、必ず良い時期や春が訪れることを表しています。

英国の詩人であるシェリーの詩「西風の賦」の一節が由来となっています。

捲土重来(けんどちょうらい)

中国の成語で、「土を巻き上げて再び来る」という意味です。

失敗や挫折の後に、力を蓄えて再び挑戦し、成功を収めることを意味します。

苦参甘楽(くじんかんらい)

「苦い参(参加)があれば、甘い楽しみが来る」という意味の成語です。

困難や苦労を経験した後には、喜びや楽しい時が訪れることを表しています。

一陽来復の対義語をご紹介

「一陽来復」の反対の意味を持つ表現として、直接的な対義語ではないようです。

ただ、「楽あれば苦あり」が対義語に近いと考えられます。

「楽しい時期や良い状況があれば、それに続く困難や苦しい時期もある」という意味を持ちます。

また、「苦あれば楽あり」という表現もあり、「困難や苦しい時期があれば、その後には楽しい時期や良い状況が訪れる」という意味で、「一陽来復」と似たような意味合いを持ちます。

まとめ

「一陽来復」という言葉は、人生の困難な局面の後に訪れる希望の光を象徴しています。

人生、悪いときもあれば、良いときもあるのが常です。

辛い時期が続くと、なかなか希望は見出せないものですが。
そういう時でも、くさらずに、事態がよくなるよう自ら行動していきたいものですね。