「なし崩し」という言葉は、日常生活でもよく使われますね。

ところが、現在の使い方は、本来の意味とはかなり違ったニュアンスになっています。

つまり、誤って使われていることが多いということです。

2017年の「国語に関する世論調査」では、実に6割以上の人が間違った意味でこの言葉を理解しているということが分かっています。

この記事では、「なし崩し」の本来の意味と、例文を用いて使い方についても詳しく紹介しています。

なし崩しの本来の意味は?

「なし崩し」という言葉の本来の意味は、「段階的に進める」または「少しずつ進行する」ということです。

具体的には、何かを一度に完了させるのではなく、徐々に、部分的に進めていく様子を指します。

例えば、借金の返済において「なし崩し」という言葉を使う場合、これは借金を一括で返すのではなく、少しずつ、計画的に返済していく状況を表します。

同様に、プロジェクトや作業を進める際にも、全体を一度に完了させるのではなく、段階を踏んで少しずつ進めていくことを指します。

「なし崩し」という言葉を分解すると、「なし」と「崩し」の二つの要素から成り立っているのが分かります。

「なし」は「済ます」という意味を持ち、「崩し」は「壊す」という意味を含んでいます。

したがって、「なし崩し」とは、文字通りには「済し壊していく」という意味合いを持ちます。

それが転じて、「少しずつ進めていく」という意味になったというわけです。

元々は、借金の返済で少しずつ返していくという意味でしたが、お金のことだけでなく、他の様々な場面で使われるようになりました。

なし崩しは誤用が多い?

「なし崩し」の本来の意味は上記のとおりです。

ところが、最近は、「物事をうやむやにする」や「結果として何も解決しない状態にする」という意味で用いられることがあります。

実は、このような意味で使うのは間違いです。

特に、「なし崩し的」という言葉で、物事が計画的に進まなかったり、うやむやにしてしまう様子を表すことが多いです。

このような「なし崩し」の誤用は、言葉の本来の意味とは異なる解釈が一般的に広まった結果と考えられています。

「なし崩し」の「なし」を「無し」と解釈し、「崩し」を物事が崩れる、つまり解決せずに終わるという意味で捉えることから、間違った使い方をしてしまうようです。

ですが、このような解釈や使い方は、元々の意味とは大きく異なります。

前述のとおり、「なし崩し」は、物事を計画的に、段階的に進めるという肯定的な意味合いを持つ言葉です。

そのため、言葉の本来の意味を理解し、適切に使い分けることが大切になりますね。

ただし、言葉の誤用が広まると、それが正しい使い方として定着することがあります。

特に「なし崩し」は間違って使われることが多いので、「うやむやにする」という本来の意味とは違う意味を含むようになるかもしれません。

それが良いか悪いかは別として、言葉の意味は時代と共に変わっていくことが多いので、これからの変化を注意深く見守る必要もあるでしょう。

なし崩しの使い方をご紹介

ここでは、「なし崩し」の本来の使い方を、簡単な例文で紹介します。

  • 彼は借金をなし崩しに返済している。毎月少しずつでも確実に返済しており、着実に借金を減らしている。
  • 新しいシステムの導入は、従業員の負担を考慮してなし崩しで行われた。最初は部分的に導入し、徐々に全体に広げていった。
  • 会社の引っ越しはなし崩しで進行された。まずは重要な書類や機器を移動させ、その後徐々に残りの物品を運んだ。
  • 彼らの関係はなし崩し的に変化していった。最初は友人として出会い、徐々にお互いに深い感情を抱くようになった。
  • 彼女はダイエットをなし崩し的に進めている。毎日の食事を少しずつ変えていき、徐々に運動量も増やしている。

以上のように、「なし崩し」は、「段階的に進める」や「少しずつ進行する」という意味で使われます。

よく見かける誤用とは、全く違う意味だということが分かるかと思います。

なし崩しの類義語をご紹介

「なし崩し」の類義語としては

  • 徐々に
  • 段階的に
  • 少しずつ

などが挙げられます。

どれも、なし崩しを簡単に言い換えたものです。

なし崩しの誤用としての類語をあげると?

参考までに、なし崩しが誤用されるときの意味、すなわち「結果として何も解決しない状態」を指すときの類語を紹介します。

  • うやむや
  • 曖昧(あいまい)
  • 放置

これらはいずれも、物事が明確な解決を見ずに不透明な状態が続くことを表現するときに用いられます。

まとめ

「なし崩し」という言葉は、本来「段階的に進める」や「少しずつ進行する」という肯定的な意味を持ちます。

ですが、現在は、「物事をうやむやにする」や「何も解決しない状態にする」と誤って解釈されることが多いです。

このような間違った使い方がそのまま続けば、「なし崩し」の意味も、文字通りなし崩しで変化していくかもしれません。

とはいえ、やはり、本来の意味と正しい使い方を理解し、誤用は避けるようにしたいですね。