「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」という故事成語があります。

あまり聞きなれない難しそうな言葉ですが、最近はインフルエンサーと呼ばれる方々や個人起業家さんの語録で見かけることがあります。

この記事では、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味と由来、例文を用いて使い方も詳しく紹介しています。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの意味は?

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は「えんじゃくいずくんぞ こうこくのこころざしをしらんや」と読みます。

意味は、小さな存在が大きな存在の野望や志を理解することは難しいというものです。

燕雀は、その名の通り、「つばめ」や「すずめ」のような小鳥のこと。
鴻鵠は、少しややこしいですが、鴻は「おおとり」、鵠は「くぐい」を指し、大きな鳥を象徴しています。

そこから、小さな鳥たちが、より大きく力強い鳥の大きな夢や目標を把握するのは困難であると、比喩的に使われているわけです。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの由来は?

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の由来は、中国の古典「史記」に記されています。

具体的には、陳勝という人物が若いころ農夫として暮らしていた時のエピソードです。

陳勝は、隣で働ている農夫に「身分が高くなってもお互いのことを忘れないでいよう」と語りかけます。

ところが、その農夫は、身分が高くなるなんてありえないとあざ笑います。

それに対して、陳勝は「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」とつぶやいたというお話です。

さて、陳勝は、その後呉広という人物と一緒になって、秦朝の暴政に対する反乱を起こし、その後の秦朝の崩壊と中国歴史上の大きな転換期となる楚漢戦争へとつながる一連の出来事のきっかけを作りました。

いわゆる陳勝・呉広の乱ですね。

漫画「キングダム」で言えば、が亡くなった後の話で、劉邦項羽より先に秦朝に対して兵を挙げました。
結局、陳勝も呉広も秦軍に敗れてしまいます。

大学受験の世界史でも登場しますし、古文・漢文でも「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は習うことがあるので、わりと有名なお話でもあります。

陳勝・呉広の行動がきっかけとなり、その流れで項羽や劉邦も反乱を起こし、秦朝の崩壊、漢の成立へとつながっていきます。
そのため、陳勝と呉広は、中国の歴史上でも重要な役割を果たした人物と位置づけられています。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの使い方は?

続いて、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの使い方として、3つの例文を紹介します。

日常会話であまり使うことはないかもしれませんが、知っておくと便利です。

私の新しいプロジェクトについて話したけど、周りの人はピンと来なかったようだ。まあ、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやだな。
君のアイデアがすぐには受け入れられなくても、落ち込む必要はない。燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。いつかきっと、君の価値は理解されるよ。
多くの人が私の夢を馬鹿にするけど、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやで、私は気にしない。いつか大きな成果を上げて見せるよ。

以上のように、理解されないことへの失望、他人を励ます際、または自分の大きな目標を表現する際に使うことができます。

特に最近は、インフルエンサーと呼ばれる方々が好んで使うのを見かけることがあります。
日ごろから他人には理解できないことをやり続け、成功したわけですから。

大きなことを成し遂げる人物の考えや行動が、周囲の凡人にはなかなか受け入れてもらえないというのは、世の常ですね。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの類語は?

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の類義語として、以下の3つが挙げられます。

  • 鷽鳩大鵬を笑う(がくきゅうたいほうをわらう):小さな鳥が大きな鳥を笑うという意味で、小さな視野を持つ者が大きな野望を持つ者を理解できず、軽んじる様子を表しています
  • 猫は虎の心を知らず:猫(小さな存在)が虎(大きな存在)の心理や野望を理解することは難しいということを示しています
  • 小人の心を以て君子を量る(しょうじんのこころをもってくんしをはかる):小さな視野や限られた経験を持つ人が、より高い理想や大きな野望を持つ人の価値や行動を正しく評価することは難しいということを示唆しています

これらの類義語は、いずれも大きな野望や志を持つ人物と、それを理解できない小さな視野を持つ者との間の理解の差を表現しています。

まとめ

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は、小さな存在が大きな存在の野望や志を理解することの難しさを表す言葉です。

最近は、インフルエンサーや起業家の方々が使っているのを目にすることがあります。

大きな夢を追う人々の心情を表すこの言葉は、理解されないことへの失望や励まし、自己表現にも使える故事成語です。

普段はあまり使うことはないかもしれませんが、これが言えるような存在になりたいものですね。