「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざがあります。
日常会話では頻繁に使う表現ではないかもしれませんが、故事成語として広く知られている言葉でしょう。
この記事では、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意味から例文や類義語など詳しく紹介しています。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの意味は?
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は「こけつにいらずんばこじをえず」と読みます。
大きなリスクを冒さずして大きな成功や報酬を得ることはできないという意味です。
何か価値あるものを手に入れたいのであれば、それ相応の困難や危険に立ち向かわなければならないという教えを表しています。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの由来は?
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、中国の後漢時代に成立した「後漢書」内の班超の物語に起源を持ちます。
この物語で、「不入虎穴、焉得虎子」という言葉が登場します。
直訳すると「虎の巣穴に入らなければ、虎の子を得ることはできない」という意味です。
虎はその凶暴さで知られ、その巣穴に踏み入ることは非常に危険を伴います。
それでも、虎の子を手に入れる、すなわち大きな成果や成功を得たいのであれば、そのリスクを冒す必要があるという教訓が込められています。
この故事は、漢の将軍班超が楼蘭(ろうらん)という国に使者として出向いたときのエピソードに基づいています。
始めは歓迎され平穏に過ごしていましたが、後に漢と敵対する北匈奴から多数の使者が楼蘭にやってきます。
班超と北匈奴との間に緊張が高まりますが、兵力では北匈奴に敵わない状態です。
しかし、班超は数に劣る自軍を「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と奮い立たせ、敵を奇襲して勝利を収めました。
この話から、危険を冒さなければ大きな目的を達成することはできないという故事が生まれたというわけです。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの使い方は?
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の使い方として、例文を5つ紹介します。
- 虎穴に入らずんば虎子を得ずというように、何事においても成功を収めるためには大きなリスクが伴うものだ。
- 彼は新しいビジネスを立ち上げる際、虎穴に入らずんば虎子を得ずと自分に言い聞かせ、未知の市場に果敢に挑戦した。
- 競技でトップを目指すには、過酷なトレーニングを避けて通ることはできない。虎穴に入らずんば虎子を得ずの精神で、彼女は日々の練習に励んだ。
- 海外留学が決まった友人に、虎穴に入らずんば虎子を得ずと言って勇気づけ、新たなキャリアの一歩を踏み出すよう励ました。
- 彼女は小説家としてのデビューを夢見ていたが、出版社からの何度もの拒絶に直面した。しかし、虎穴に入らずんば虎子を得ずという言葉を胸に諦めず、ついには作品が認められた瞬間が訪れた。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの類義語は?
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の類義語を以下に2つ紹介します。
危ない橋も一度は渡れ(あぶないはしもいちどはわたれ)
達成や成功を目指す上で避けられないリスクや危険も、少なくとも一度は乗り越えるべきだという意味を持ちます。
目的を達成するためには、ある程度の冒険や挑戦が必要であることを教えています。
枝先に行かねば熟柿は食えぬ(えださきにいかねばじゅくしはくえぬ)
欲しい結果や報酬を手に入れるためには、それ相応の努力やリスクを取る必要があることを意味しています。
熟した柿を手に入れたければ、枝の先端まで危険を冒しても行かなければならないということから、大きな成果を得るためには勇気ある行動が必要であることを示しています。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの対義語は?
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の対義語も以下に3つ紹介します。
石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
どんな行動を起こす前にも慎重に事を進める様子を表しています。
リスクを最小限に抑え安全を最優先に考える態度で、物事に対して慎重に、そして用心深く進めることを強調しています。
君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
賢明な人は危険な状況や誘惑から自らを遠ざけるべきだと教えています。
自己保護の観点から、不必要なリスクを避け、安全な道を選ぶことの大切さを示しています。
命あっての物種(いのちあってのものだね)
命があってこそ、他のすべての価値や成果が得られるという意味を持つ表現です。
どんなに大きな成功や報酬を目指しても、自分の命や健康を損なうような危険は避けるべきだという考えを表しています。
生命の価値を最優先に考え、リスクを冒すことの危険性を警告しています。
まとめ
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とは、大きな成功や成果を手に入れたい場合、避けて通れないリスクや挑戦が伴うことを意味します。
確かに、ちょっとしたことで命取りになりかねない世の中では、不必要なリスクは避けるべきでしょう。
ただ、人生では時に、目標達成や夢の実現のためには、通常の安全圏を越えた挑戦が必要になることもあります。
そんなときは、しっかりと覚悟を決め、リスクを受け入れる勇気が必要になりますね。
相手を励ますときも、自分を奮い立たせるときにも、ぜひ覚えておきたい表現です。