ファーストペンギンという言葉があります。

マーケット用語としてよく使われる言葉です。

ご存じの方も多いでしょう。

ペンギンの生態をとてもうまくビジネスに応用した言葉ですが。

しかし、このファーストペンギンの実際の行動は、ビジネス用語の使われ方とは全く違ったものだったりします。

平たく言えば、ファーストペンギンは嘘ということになります。

では、実際のファーストペンギンとはどういう存在なのか?

この記事では、ファーストペンギンの嘘について、詳しく説明していきます。

ファーストペンギンとは?

まず、ファーストペンギンとはどういう意味なのか、簡単に説明します。

南極に生息するペンギンは、アザラシやオットセイなどに食べられる危険があるため、なかなか海に飛び込みません。

陸地では群れをなして立ち止まっています。

その中で、危険を恐れずに最初に飛び込む1匹のペンギンがいました。

そのペンギンが海の中でも無事であることを確認し、陸地にいた他の大勢のペンギンが一斉に海に飛び込むようになります。

この最初に飛び込んだペンギンこそ、ファーストペンギンと呼ばれる存在です。

ここから転じて、マーケット用語として使われるようになりました。

すなわち、リスクを恐れずに新しいビジネス分野を初めて開拓した人物、あるいはその様子を指し示す言葉です。

そのため、新しいことにチャレンジすると言う意味で、ポジティブな言葉としてとらえられています。

実はファーストペンギンのエピソードは嘘だった!

上記のように、ファーストペンギンは新しいことに挑戦するという意味で、マーケット用語として知られるようになりました。

ところが…

最近のペンギン研究者により、このファーストペンギンのエピソードは真実ではないということが明らかにされています。

どういうことかというと。

最初に飛び込んだペンギンは、危険をかえりみず勇敢に行動したわけではありませんでした。

実際のところは、単に足をすべらせて海に落ちただけのペンギンでした。

動機や目的があって飛び込んだのではなく、ただ落ちただけの話だったんです。

ほんと、夢をこわすような話ですが、これが真実なんです。

そもそも、ペンギンにはボスやリーダー的存在はおらず、わざわざ自分の身を危険にさらしてまで海に飛びこむような者などいません。

ペンギンに限らず、たいていの動物は海に飛び込むのを嫌います。

そのため、単独で飛び込むことはなく、一斉に飛び込むのが普通だそうです。

ただ、もしかしたら、勇敢なペンギンがいて、真っ先に飛び込んでやる!というケースはあったのかもしれません。

けれども、それは、近くに自身を食らおうとする天敵がいないという、確実に安全な状況だけに限られるでしょう。

基本的に、ペンギンの生態から考えて、たまたまドジなペンギンがいて、海に落ちてしまったというのが、自然なケースということです。

セカンドペンギンのエピソードも嘘だった!

ファーストペンギンに関連して、セカンドペンギンというエピソードもあります。

これは、先頭にいたペンギンが後ろのペンギンに押されて、海に落ちたというものです。

前にいたペンギンがファーストペンギンで、そのペンギンを落っことしたペンギンがセカンドペンギンになります。

そして、この場合、セカンドペンギンは、ファーストペンギンの無事を確認して海に飛ぶこむとされています。

このセカンドペンギンのエピソードも、最近ビジネスでたとえ話として使われるのを見かけます。

すなわち、新規のビジネスが開拓されたとき、それが成功するのを確認してから、後に続いて参入する方がよいということです。

やはり、新たにビジネスを切り開こうとすると、かなりの資金や時間を費やさなければいけないことが多いです。
それで成功すればいいものの、失敗すれば大きな損失となってしまいますよね。

したがって、自らは新たに事を起こさず、成功したところにうまく乗っかる方が賢いということです。
1番手にならずとも、2番手の方がおいしい思いができることも多いというわけです。

これは、かなり興味深い観察ですが。

残念ながら、実際にはセカンドペンギンなる存在もいないそうです。

ペンギンはどんな状況においても、一斉に海に飛び込むのが普通です。
1匹のペンギンが海に落ちて、その無事を確認して飛び込むということはないそうです。

ファーストペンギンが勇敢なペンギンであろうと、ドジなペンギンであろうと、後に続くペンギンたちはお構いなしに一斉に海に飛び込むということです。

マーケット用語としてのファーストペンギンは今後も使われる?

これまで述べてきたように、実際には、特殊な状況を除いて、勇敢なファーストペンギンなる存在はいないということがあきらかになっています。

じゃあ、マーケット用語として定着しているファーストペンギンはどうなるの?

事実を知ると、ファーストペンギンをいう言葉を使うのに抵抗を感じてしまいますよね。

ただ、個人的には、正直あまり気にしなくてもよいと考えています。

というのも、事実と違った用い方をしている用語はたくさんあるからです。

例えば、「ペンは剣よりも強し」

現在は、「言論の力は、権力や武力よりも大きな力を持つ」というような意味で使われていますよね。

ところが、そもそもの由来は、「権力は確かなもので強い」という意味合いで使われました。
三銃士(ダルタニアン物語)でも登場するリシュリューの言葉とされています。
現在とは全く逆の意味だったということです。

さらに、ペンは剣よりも強しは、もっと恐ろしい教訓が隠されている言葉だったりします。

ここでは深く立ち入ることはしませんが、また別の機会にお話しするかもしれません。

いずれにせよ、ペンは剣よりも強しという言葉は今でもよく使われますよね。
その由来を知っているかどうかに関わらず。

同じように、マーケット用語のファーストペンギンも、ペンギンの生態はどうであろうが、このまま使われるものと思います。

私も普通に使うと思いますしね。

だた、事実とは異なるということは知っておいて損はないはずです。

また、ペンギンの実態よりもっと事実に近い状況を表した言葉などに、取って代わるということもあるかもしれませんね。

まとめ

「ファーストペンギンになれ!」

「セカンドペンギンでおいしいとこ取り」

自己啓発書やビジネス書でよく語られますし、起業家さんやインフルエンサーと呼ばれる方がSNSなどでよく発信する言葉です。

ところが、ファーストペンギンも、セカンドペンギンも、その実態は、現在使われているような言葉の意味とはかけ離れています。

ですが、事実がどうであれ、これらの言葉が使われなくなるとは思えません。

それと、ファーストペンギンにしろ、セカンドペンギンにしろ、ビジネスに即して考えてみれば、とても興味深い話なんですよね。

おそらく、リスクを背負って勇敢にも海に飛び込んだというファーストペンギンのエピソードは勘違いではなく、誰かが考え出した創作だと思います。

ビジネスに応用できる話として、うまくまとまりすぎているくらい示唆に富んでいますからね。

誰が考え出したのか分かりませんが、仕掛けた方はすごいな~と感心せずにいられません。