ダナの概略

ダナ(ダヌ)はケルト神話の地母神で、ダーナ神族の神々の母です。
ダニャとかアナとかアニュとも呼ばれます。
ダーナ神族はトゥアハ・デ・ダナーンと呼ばれますが、これはダナの一族という意味です。

ケルト神話の主要な神々の母なる存在なのですが、神話上で語られることはなく固有の物語というものがありません。
そのため、どのようにして生まれたのか?どんな姿をしていたのか?そういったことは全く分かっていません。
神話の中において名前さえもほとんど出てきません。

これは、ケルト神話が天地創造神話を持っていないことによるもので、仕方のないことと考えられます。
そういう意味で、天地創造の物語を有しているギリシア神話やエジプト神話とはかなり異なった性格をしていると言えます。
いわば、万物の母としてあらゆるものを超越している存在というところでしょうか。

ですが、大地を崇拝して大地母神として神格化するのは、各地の神話に共通することです。
本質的には古代の宗教や神話に登場する大地母神と異なることはないと思います。

また、ダナは大地を象徴しているため、大地の色々な様子に応じて数多くの性質を持っていると考えられています。

豊穣を意味するのはもちろんですが、一方で時折天災や飢餓をもたらして人々を苦しめることがあります。
そこから戦場においては生死を司る存在となります。

大地を所有するという意味では、その支配権を担うということも考えられます。
そのため、王権や土地の主権の継承にも関わってきます。

以上のように、ダナは大地を神格化した存在であるため、様々な性格を持っています。
後にこのサイトでも触れると思いますが、ケルト神話に登場するモルガンやブリードといった女神もダナの影響を受けていると考えられています。
ケルト神話に登場する女神は全てダナの分身であるという大胆な考えもあるようです。

そして、ケルト人がキリスト教化してからは、聖母マリアの母である聖アンナと同一視され、信仰の対象になったと言われています。