ニュクスの概略
ニュクスとは、ギリシア神話に登場する女神で「夜」を神格化した存在です。
英語の「night(夜)」の語源とも言われています。
ギリシア神話の世界創造から存在した原初神で、ヘーシオドスの『神統記』にその詳しい記述があります。
それによると、原初にまず始めにできたのはカオス(混沌)であり、そこからガイア(大地)、エロース(愛)が生まれ、それとは別にカオスからニュクスとエレボス(幽冥)ができたとあります。
ニュクスとエレボスは愛によって結ばれ、
- アイテール
- ヘーメラー
を生みます。
アイテールはエーテルのことで、化学などの術語に使われるもの。
ヘーメラーは「昼」を意味し、夜に対する存在です。
夜が昼を生んだというのは逆説的に感じますが、古代ギリシア人は世界は夜から昼になるという順序で考えていたのかもしれません。
また、夜と昼は当然ですが一緒になることはありません。
なので、ニュクスとヘーメラーは出会うことがないとされています。
両者は世界の西の果ての地下にある館を共有し、ニュクスが外を出て夜を巡らしている間はヘーメラーが館で待機し、逆にヘーメラーが外で昼をもたらしている時はニュクスが館に待機しています。
両者が出会うのは昼と夜の一瞬の境目だけで、そのときにお互いに挨拶をするのみとされています。
さて、ニュクスはエレボスと一緒になってアイテールとヘーメラーを生みましたが、エレボスと交わることなく彼女だけで以下の神々を生みました。
- モイライ(運命)3女神
- モロス(死の定業)
- ケール(死の運命)
- タナトス(死)
- ヒュプノス(眠り)
- オネイロス(夢)
- モーモス(非難)
- オイジュス(苦悩)
- ネメシス(憤り、復讐)
- ヘスペリデス(黄昏の娘たち)
- アパテー(欺瞞)
- ピロテース(愛欲)
- ゲーラス(老齢)
- エリス(争い)
上記の神々の意味するところをザっと見ると、人間にとって忌まわしい存在だらけであることが分かると思います(^^;
それだけニュクスが象徴する夜の闇が、人間にとって恐ろしいものであったということでしょう。
ニュクスは人間の苦しみの原因となる様々な災いを生みだしと言われますが、それにはこういう背景があります。