クロノスの概略
クロノスは、ウーラノスとガイアの間に生まれティターンの1神です。
ティターンの中では一番末の弟、末っ子にあたります。
また、ゼウスやポセイドン、ハーデスらの父親になります。
ウーラノスの項で述べた通り、ウーラノスを襲撃した張本人がクロノスです。
この父親殺しの原因の一つとなったのは、ウーラノスがキュクロープスやヘカトンケイルの巨人たちを忌み嫌って地下の奥底のタルタロスに閉じこめてしまったことでした。
ところが、あろうことか、クロノスも巨人たちを疎ましく思い、ウーラノスと同じように巨人たちをタルタロスに閉じこめてしまいました。
これに対して、またもやガイアは怒ってしまいます。
そして、いつか自身の子供の一人によってクロノスの王座を奪われると予言することになります。
ここでの予言は単に未来を言い当てるという意味だけではなく、そのようになさしめるという呪いの意味があると考えられます。
この予言を聞いたクロノスは、当然のことながら自身の将来を不安に思います。
そこで、自分の子供が生まれるたびに、その子を飲み込むという行動に出ます。
クロノスは自分の姉にあたるレアーとの間に
- ハーデス
- ポセイドン
- ゼウス
- ヘーラー
- ヘスティアー
- デーメーテール
らの子供をもうけました。
クロノスはこれらの子供を全て食らうわけですが、レアーは最後に生まれようとしていた子供だけでも兄や姉たちと同じ目に合わせないようにと、密かに逃亡してクレタ島に身を隠します。
ほどなくしてクレタ島で最後の子供が生まれますが、この最後に生まれた子がゼウスに他なりません。
レアーはゼウスの代わりに1個の石を産衣に包み、子供と見せかけてクロノスに与えました。
だまされたクロノスはそのまま石を飲み込んでしまいます。
ゼウスはしばらくクレタ島に身を潜めていましたが、成人になって父の王座を奪おうと考えます。
そして、計略によってクロノスに飲み込まれた子供たちを吐き出させ、兄と姉たちを救い出し、遂にはクロノスに宣戦します。
クロノスは自分の兄姉のティターンを味方につけてゼウスと戦い、この戦争は10年間続きました。
あるとき、ゼウスはガイアから、タルタロスに閉じこめている怪物たちを味方に引き入れれば勝利を得るだとうと言われます。
そこで、ゼウスはタルタロスに閉じこめられていたキュクロープスやヘカトンケイルたちを味方につけ、クロノスに勝利しました。
戦争に敗れたクロノスは、逆にタルタロスに閉じこめられるはめになりました。
以上がクロノスにまつわるお話ですが、歴史は繰り返されるかのごとく、クロノスは父のウーラノスと同じように自身も息子のゼウスによって王座を奪われてしまっていますね。
しかも、両者とも一番末の男子に取って代わられています。
この背景として、古代のギリシアでは末子相続が行われていたのではないかという考えがあります。
しかしながら、歴史上古代ギリシアの各都市でそのような相続が行われた例は見受けられないとも言われています。
そのため、ウーラノスからクロノスまでの神話の起源はギリシア民族にはなく、他の地域(具体的にはアジア)の民族に由来するものという見解があります。
ローマ神話のサトゥルヌスと同一神
クロノスはローマ神話のサトゥルヌスに対応し、同一神とされています。