「灯台下暗し」という慣用句があります。

灯台というと、海辺にある標識の施設を思い浮かべることが多いでしょう。

ところが、ここでの「灯台」は、実は全く違うものを指しています。

意外と知られていない事実のようなので、その由来は理解しておいた方がよいですね。

この記事では、「灯台下暗し」の意味と由来、例文から類義語や英語表現まで詳しく紹介しています。

灯台下暗しの意味は?

「灯台下暗し」は「とうだいもとくらし」と読みます。

目の前や身近なことに気が付かないという意味のことわざです。

灯台の下だけが暗く、遠くは明るく照らすことから来ています。

遠くのものに注目してしまい、身近なものや事象の価値を見落としてしまう状況を表しています。

灯台下暗しの由来は?

「灯台」というと、現代の海岸や港に設置されている航路標識の灯台を思い浮かべることが多いと思います。

ですが、「灯台下暗し」の「灯台」は、実は、過去の家庭で使用された燭台(しょくだい)のことを指しています。

燭台は、油を入れた皿に芯を浸して炎を灯す古い形式の室内照明器具で、その真下は照明の影によって暗くなりがちでした。

この現象から「灯台下暗し」という言葉が生まれ、「身近なものほど見落としやすい」という意味で使われるようになったとされます。

正確な起源についてはハッキリしていませんが、俳諧や井原西鶴の浮世草子など、古い文献にその記述が見られます。

したがって、江戸時代にはすでに知られていた表現と考えられます。

なお、現在の海上灯台も周囲を明るく照らす一方で、その直下は暗いという点で同じです。

そのため、海岸の灯台を連想するのも無理はありませんが、実際には間違いなので、注意が必要ですね。

灯台下暗しの使い方をご紹介

「灯台下暗し」の使い方として、5つの例文を紹介します。

  • 財布を一生懸命探していたけれど、すでにズボンのポケットに入れていたのを忘れていた。灯台下暗しとはこのことだ。
  • 遠くの観光地ばかり探していたけれど、実は自分の街にも素敵なスポットがたくさんあることを知り、まさに灯台下暗しだった。
  • 新しいレストランを求めて遠出をしていたが、近所に隠れた名店があることを友人に教えてもらい、灯台下暗しの発見をした。
  • 多忙で家族との時間を作ることが難しいと思っていたが、灯台下暗しというように、日常の小さな瞬間にも幸せがあることに気づいた。
  • プロジェクトの納期になると、いつも急ぎ足でタスクをこなしているが、細部のミスを見落として灯台下暗しの状況に陥らないように注意しなければいけない。

灯台下暗しの類義語をご紹介

「灯台下暗し」に似た意味を持つ言葉として、次の2つの表現を紹介します

秘事は睫(ひじはまつげ)

最も隠そうとする秘密や本心は、実はその人のもっとも近くに存在するという意味です。

睫(まつげ)は自分の体の一部でありながら、普段は意識しない場所にあることから、身近過ぎて見過ごしてしまう事象を指します。

傍目八目(おかめはちもく)

当事者よりも第三者の方が物事の真相や問題点を客観的に見抜くことができるという意味です。

直訳すると「旁(傍)の目は八つの目」となり、当事者には見えない事実や解決策が、外から見ている人には明確に見えることを表します。

「岡目八目」とも表記されます。

足下の鳥は逃げる(あしもとのとりはにげる)

目の前にあるチャンスや利益を見落とし、結果的にそれを逃してしまうという意味のことわざです。

身近な機会に気づかず、手遅れになってからその価値に気付く状況を警告する表現です。

身の回りにあるものを見落とすという意味で「灯台下暗し」と共通点がありますが、「足下の鳥は逃げる」は、機会を逃すことに焦点を当てています。

灯台下暗しの対義語をご紹介

「灯台下暗し」の直接的な対義語というのは存在しないようです。

目の前にあるものに集中しすぎて、全体の様子や遠すぎる物事を見落とすという視点の違いという意味で、「木を見て森を見ず(きをみてもりをみず)」「鹿を追う者は山を見ず(しかをおうものはやまをみず)」という表現がありますが、ちょっと強引ですね。

簡単に、「見落とさないようにする」や「間違わないようにする」という意味で

  • ミスを防ぐ
  • 誤りを犯さない
  • 細心の注意を払う
  • 注意を行き届かせる
  • ヘマをしない
  • ドジをしない
  • 下手をこかない

といった表現を使うのが無難かと思います。

灯台下暗しの英語表現をご紹介

「灯台下暗し」の英語表現はいくつかありますが、最も有名なのは

“The darkest place is under the candlestick”

でしょう。

直訳すると「ろうそく立てのもとが最も暗い」となります。

ろうそくの明かりが周囲を照らしているにもかかわらず、その直下だけが暗いという事実から、目の前の事実や解決策を見落としやすいことを指します。

まとめ

「灯台下暗し」は、目の前や身近なものを見落としやすい状況を表します。

一般的には海辺の灯台を想像してしまいますが、実際には、かつて室内照明器具として使われた燭台(しょくだい)を指しています。

日常生活では、身近にある大切なものや価値あるものを見過ごしてしまうことはよくありますね。

そうならないように、日頃から注意深く周囲を見る習慣をつけたいものです。