「鳶が鷹を産む」ということわざがあります。

平凡な親から、とても優秀な子供が生まれるという意味です。

よく知られている表現だと思いますが、使い方には少し注意が必要となります。

この記事では、「鳶が鷹を産む」の意味と由来、例文から類義語や対義語まで詳しく紹介しています。

鳶が鷹を産むの意味は?

「鳶が鷹を産む」は「とんびがたかをうむ」と読みます。

鳶は「とんび」ですが、「とび」と読むこともあります。

また、「産む」は「生む」という漢字で表記されることもあります。

意味は、平凡な親から非凡な子が生まれること、または期待以上の素晴らしい結果が出るということです。

鳶と鷹はどちらも猛禽類ですが、鳶は都市部でもよく見かける比較的一般的な鳥で、鷹ほどの強さや威厳はありません。

そこから、「鳶が鷹を産む」は、平凡な親から非凡な能力を持つ者が現れることを象徴的に表しています。

鳶が鷹を産むの由来は?

「鳶が鷹を産む」という表現の由来は、トンビ(鳶)とタカ(鷹)の関係に注目すると理解しやすいです。

意味の解説でも述べたとおり、鳶は比較的平凡な鳥であるのに対し、鷹は鳥の中でも特に強力で賢い存在です。

鳶と鷹も実はタカ科に属する鳥類で、外見やサイズが似ている点では共通しています。

、一見すると区別がつきにくいこともあります。

ところが、生態や行動には大きな違いがあります。

鳶はしばしばゴミを漁るか死んだ動物を食べるのに対し、鷹は狩猟技術が高く、人間との関係も深いです。

そのため、鳶は一般的な存在、鷹は卓越した存在として見なされてきました。

現在でも、鷹の飼育や訓練を専門とする「鷹匠(たかじょう)」という職人がおり、害鳥を追い払う作業やイベントで鷹の技術を披露することがあります。

この伝統はかなり古くからあり、「日本書紀」によると、仁徳天皇の時代(355年)にはすでに鷹狩が行われていたと記されており、皇室に仕える鷹匠が狩猟を指揮していたとされています。

その後も、鷹匠は高い地位を保ち、貴族や武士の間で重宝されてきたという歴史があります。

このトンビとタカの大きな特徴の違いから、平凡な者(=トンビ)から優れた者(=タカ)が生まれるという意味になったというわけです。

鳶が鷹を産むの使い方をご紹介

「鳶が鷹を産む」という表現を使用する際には、いくつか注意すべき点があります。

このことわざは、一見平凡な親から非凡な才能を持つ子が生まれることを称賛する意味合いを持ちますが、使用する文脈によっては感じ方が異なる場合があります。

謙遜としての使用

自分の家族や子供について話す際に謙遜の意を込めて使用することは一般的に受け入れられています。

自分の子供を褒める際に、「私なんかからこんな素晴らしい子が生まれるなんて、まさに鳶が鷹を産んだようだ」というように使うことで、謙虚さを示しつつ子供の才能を称えることができます。

他人に対する使用

他人の家族や子供に対してこの表現を使う際には慎重さが求められます。

例えば、他人の親を「鳶」と表現すると、その人を平凡またはそれ以下と評価しているように受け取られかねませんよね。

当然ながら、その人に対して不快感を与える可能性があります。

特に、相手の才能や成果を称える意図があっても、その表現方法によっては相手を侮辱していると捉えられる恐れがあるため、注意が必要になります。

文脈の理解

「鳶が鷹を産む」を使用する際には、聞き手がその意味や背景を理解しているかどうかも重要です。

文化的背景や個人の価値観によっては、この表現が正しく理解されない場合があります。

そのため、相手との関係性や状況を考慮して、適切な表現を選ぶことが大切です。

総じて、「鳶が鷹を産む」を使用する際には、謙遜や称賛の意図を持っていても、相手の感情や受け取り方を配慮する必要があります。

特に他人に対して使用する場合は、その言葉が誤解や不快感を招かないように注意する必要がありますね。

実際の例文

以上の注意点を踏まえたうえで、「鳶が鷹を産む」の例文を3つ紹介します。

  • どちらも音楽には縁がない私たちから、国際コンクールで賞を取るピアニストが生まれるとは、鳶が鷹を産んだとしか言いようがない。
  • 平凡な小さな町から世界的に有名な画家が出たことは、まさに鳶が鷹を産んだということだ。
  • たとえ他人の子供を褒める意図があっても、鳶が鷹を産んだと言うのは、親を見下しているように受け取られ、失礼にあたる。

鳶が鷹を産むの類義語をご紹介

「鳶が鷹を産む」に似た意味を持つ言葉として、次の2つの表現を紹介します

烏の白糞(からすのしろふん)

非常に珍しいことや期待していなかったことから素晴らしい結果が生まれることを意味する言葉です。

烏(カラス)は通常、黒い色をしているため、白い糞は非常に珍しく、予期せぬ出来事を象徴しています。

「鳶が鷹を産む」と同様に、予想外の素晴らしい才能や成果を指す際に用いられますが、その起こり得なさや珍しさをより強調しています。

出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)

師匠を超えるほどの弟子が現れることを称える言葉です。

「藍より青し」とも言われ、藍から染め出される色が原料である藍本体よりも美しい青色であることから、弟子が師よりも優れた成果を達成することを表します。

教育や指導の文脈でよく使われ、師匠や親が自分の教えや育てた子が自分を超えることを喜ぶ心情を表現しています。

「鳶が鷹を産む」と同じく、期待を超える成果や才能の発現を称賛する際に用いられますが、特に師弟関係や親子関係における成長や成功を強調しています。

鳶が鷹を産むの対義語をご紹介

「鳶が鷹を産む」と反対の意味を持つ言葉も、次の3つを紹介します。

瓜の蔓に茄子はならぬ(うりのつるになすびはならぬ)

本質的に異なるものからは、期待する結果や性質が得られないという意味のことわざです。

瓜(うり)の蔓(つる)からは瓜しか実らないという自然の法則に基づき、親から子への遺伝の法則や、根本的な性質の変わらないことを指摘しています。

非凡な結果を期待しても、元の質からはそれが生まれにくいという現実を示しています。

蛙の子は蛙(かえるのこはかえる)

子は親に似るという意味のことわざで、どんなに期待しても、親の性質や能力の範囲内でしか子は成長しないという考えを表しています。

親が蛙であれば、その子も蛙になるという自然の法則を通じて、人間関係や社会的地位においても、根本的な変化は期待できないという状況を示しています。

期待を超える変化や成長は望めないという現実を強調します。

狐の子は面白(きつねのこはつらじろ)

一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、「親の特徴は子に受け継がれる」という意味合いを持ちます。

面白(つらじろ)とは、顔が白いという意味で、狐の特徴的な白い顔を子も持つということから、親の特性や能力がそのまま子に引き継がれることを示しています。

先ほどの「蛙の子は蛙」と同様に、親から子への直接的な遺伝や性質の受け継がれを指し、「鳶が鷹を産む」の対義語として、非凡な変化を期待することの難しさを表しています。

まとめ

「鳶が鷹を産む」は平凡な親から非凡な子が生まれることを意味し、才能や成果が期待を超える場合に使われます。

ただし、この表現を使用する際には注意が必要です。

特に他人の家族や子供に対してこの言葉を使う場合、親を平凡やそれ以下と見なしていると受け取られ、不快感を与えかねません。

そのため、使う時の文脈や相手の感情を十分に考慮することが大切になります。