「情けに刃向かう剣なし(なさけにはむかうつるぎなし)」ということわざがあります。
直訳すると、「剣」が「情け」に刃向かうことはできないとなり、おおよその意味は分かるかと思います。
特に「情け」は、日本語のことわざによく登場しますね。
この記事では、「情けに刃向かう剣なし」の意味と由来、使い方から類義語、対義語まで詳しく紹介しています。
情けに刃向かう剣なしの意味は?
「情けに刃向かう剣なし」ということわざは、どんなに強い剣や力も、慈悲や情けには勝てないという意味です。
つまり、人間の優しさや思いやりは、どんな力や武器よりも強いという教えを表しています。
力や暴力が最も重要なものではなく、人としての温かみや思いやりが最も価値のあるものであることを伝えています。
特に、受けた温情を忘れずに、それを大切にする姿勢を表すときに使われることが多いです。
また、剣が刃に置き換わり「情けに刃向かう刃(やいば)なし」と言われることもあります。
情けに刃向かう剣なしの由来は?
「情けに刃向かう剣なし」の由来は、江戸時代後期の著名な浮世絵師であり戯作者である山東京伝が記した「双蝶記」の一節とされています。
この表現は、人の優しさや思いやり、他人を思いやる心を「情け」と表現しています。
日本のことわざによく出てくるテーマですね。
一方で、「刃向かう」という言葉は、力強い者や権力を持つ者に対して抵抗する、反発するという意味を持ちます。
文字通りに解釈すると、「恩情を示す人に対して反抗するような武器は存在しない」という意味になります。
これは、恩を受けた人がその恩を敵視することはない、という考え方を示しています。
ここから、「情けに刃向かう剣なし」は、人間の優しさや思いやりがどんな力や武器よりも強いという教えを伝える表現になりました。
情けに刃向かう剣なしの使い方をご紹介
続いて、「情けに刃向かう剣なし」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 彼は、困っている時に手を差し伸べてくれた友人に対して、心からの感謝を感じていた。情けに刃向かう剣なしという言葉がぴったりだ。
- 彼との争いはもう終わりにしよう。情けに刃向かう剣なし、和解が一番だ。
- 会社でミスをしてしまったが、上司が優しくフォローしてくれた。その優しさに対しては、情けに刃向かう剣なしと感じざるを得なかった。
- 彼女は情けに刃向かう剣なしで、かつての恩を忘れず、困っている近所の人々に食事を届けたり、部屋の片づけを手伝ったりしてした。
- ずっと人の世話を焼いてきた彼がミスをしたけど、誰も責めなかった。みんな彼のことを思って、優しく対応した。まさに情けに刃向かう剣なしというやつだ。
情けに刃向かう剣なしの類義語をご紹介
「情けに刃向かう剣なし」のよく似た意味を持つ表現としては、「仁者に敵なし(じんしゃにてきなし)」があります。
「仁徳を持つ人には敵がいない」という意味で、優れた徳を持つ人は誰からも敬愛され、敵を作らないという考えを表しています。
情けに刃向かう剣なしの対義語をご紹介
次に、「情けに刃向かう剣なし」の反対の意味を持つ言葉を以下に3つご紹介します。
恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
「受けた恩を忘れて、恩人に対して悪い行いをする」という意味です。
日常的にもよく使われますね。
恩を受けたにも関わらず、その恩を裏切る行為を指しています。
「情けに刃向かう剣なし」が恩情や思いやりの価値を強調するのに対し、恩知らずの行動を示す表現です。
飼い犬に手を噛まれる(かいいぬにてをかまれる)
「自分が育てたり世話をしたりした者から裏切られる」という意味です。
自分が面倒を見てきた者に対して、その恩を忘れられ、逆に害を受ける状況を表しています。
こちらもよく使われる表現ですね。
後足で砂をかける(あとあしですなをかける)
「恩を受けたにもかかわらず、その恩を忘れて恩人に対して悪いことをする」という意味です。
特に、恩人に対して何かしらの害を加える行為を指しています。
まとめ
「情けに刃向かう剣なし」ということわざは、人間の優しさや思いやりがどんな力よりも強いという日本の古き良き教えを伝えます。
特に、受けた恩を忘れないという意味で使われることが多いです。
私たちの日常生活においても、恩情を大切にし、互いに思いやる心を持つことの重要性を思い出させてくれます。
強い力も必要ですが、人としての温かさや思いやりも同時に身に付けていきたいものですね。