「君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)」という故事成語があります。
教養や徳のある人は、危険だと分かっているところに、わざわざ近づかなくことはないという意味です。
日本でもよく知られている表現ですね。
この記事では、「君子危うきに近寄らず」の意味と由来、例文から類義語や対義語も紹介しています。
君子危うきに近寄らずの意味は?
「君子危うきに近寄らず」とは、賢明な人物(君子)は危険な状況や誘惑に近づかない、つまりリスクを避けるという意味のことわざです。
危険や不正を察知した際にはそれから離れるべきだという教訓を含んでおり、賢明さや慎重さを重んじる姿勢を表しています。
君子危うきに近寄らずの由来は?
「君子危うきに近寄らず」は、中国の古典文献に起源を持つとされています。
孔子とその弟子たちの言行を記録した「論語」が起源という話もありますが、中国の古代歴史書「春秋」に由来するというのが有力な説のようです。
「春秋」には、付随する注釈書の一つである「春秋公羊伝」があります。
その中に、「君子不近刑人」という記述が見られます。
君子は刑罰を受けるような人には近付かないという意味で、この一節が起源であると考えられています。
君子危うきに近寄らずの使い方は?
「君子危うきに近寄らず」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 彼は投資の世界で成功を収めているが、常に君子危うきに近寄らずの精神を持ち、リスクの高い取引は避けて慎重な判断を心掛けている。
- 友人から怪しい儲け話を持ちかけられたが、君子危うきに近寄らずと考え、その話には乗らないことにした。
- 政治家としての地位を守るため、彼は君子危うきに近寄らずの姿勢を取り、スキャンダルの可能性がある場所や人物との関わりを避けている。
- 君子危うきに近寄らずとよく言われるが、時には新たに挑戦することも大切だ。
- 彼女は、生徒たちに君子危うきに近寄らずという教えを伝え、危険な行動や不正行為から距離を置くことの重要性を説いている。
君子危うきに近寄らずの類義語は?
「君子危うきに近寄らず」の類語表現として、以下の3つを紹介します。
触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし)
「関わらない方が良い事柄には手を出さない方が無難」という意味を持ちます。
無用なトラブルを避けるために、関与しない方が良い事柄には関わらない方が賢明であるという教訓を含んでいます。
李下に冠を正さず(りかにかんむりをたださず)
直訳すると、「李 ( すもも ) の下で冠をかぶり直すと、すももを盗ろうとしているように誤解されるので、正してはいけない」となります。
そこから、疑われるような行動は避けるべきいう意味になりました。
たとえ悪いことをしていなくても、誤解を招くような状況や行動は避けるべきだという教えを表しています。
瓜田に履を納れず(かでんにくつをいれず)
直訳すると、「瓜畑に入ると、瓜泥棒にまちがえられるので、足を踏み入れてはいけない」となります。
こちらも、他人に誤解されるような行動は避けるべきで、自分の行動がどのように見られるかを常に意識することの重要性を教えています。
君子危うきに近寄らずの対義語は?
「君子危うきに近寄らず」と反対の意味を持つ表現も紹介します。
藪を突いて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)
「無用なことをして余計な問題を引き起こす」という意味です。
本来なら静かで問題のない状況に手を出して、かえって困難やトラブルを生じさせる行動を指します。
寝た子を起こす(ねたこをおこす)
「問題を抱えていない状況にわざわざ干渉して、問題を引き起こす」という意味を持ちます。
安定している状況をわざわざ動かして、不必要な問題を生じさせることを警告しています。
日向で埃を立てる(ひなたでほこりをたてる)
この表現も、「平穏な状況をわざわざ乱す」という意味です。
穏やかで問題のない状況に不必要に介入し、かえって混乱や問題を引き起こす行動を指摘しています。
まとめ
「君子危うきに近寄らず」は、賢明な人は危険や誘惑から距離を置くことを意味します。
中国の古典文献に起源をもつ故事成語で、リスクを避け、慎重に行動することの重要性を教えています。
もちろん、時にはリスクを冒して行動しなければならないこともあります。
ですが、明らかに身を滅ぼすようなことには首を突っ込まない方が賢明でしょう。
特に最近は、一見すると些細なことでも、後に大きな問題を引き起こすことがよくあります。
バランスを見極めることが大切ですが、何事も用心するに越したことはないですね。