「顔を立てる(かおをたてる)」という慣用句があります。

「顔」も「立てる」も日常的に使われる言葉ですが、そのままだと意味が分かりにくいかもしれません。

ですが、それぞれの比喩を理解すると、イメージしやすくなります。

この記事では、「顔を立てる」の意味と由来、例文から類義語や英語表現まで詳しく紹介しています。

顔を立てるの意味は?

「顔を立てる」という言葉は、他人の尊厳や社会的な地位を守り、その人が恥をかかないよう配慮することを意味します。

ここでの「顔」とは、文字通りの顔ではなく、人の名誉やプライドを象徴しています。

具体的には、相手の立場を考慮し、公の場でその人が面子を保つことができるように行動することを指します。

顔を立てるの語源は?

「顔を立てる」の「顔」とは、先述したとおり、人の名誉や評判を象徴しています。

また、「立てる」という言葉は、直立させるという基本的な意味のほかに、何かを支え、高め、その価値を認めるという複数の意味合い持ち合わせています。

なので、「顔を立てる」という表現全体としては、個人の公的なイメージや名誉を支持し、尊重することを指します。

特に社会的な場面でその人が尊敬され、価値ある存在として認められるよう努めることを示しています。

人が恥をかかないように細心の注意を払う日本の文化的な慣習に基づいており、相手への敬意の表れとされます。

「顔を立てる」行為は、人と人との関係において相互尊重と社会的調和を促進する役割を果たしているとも言えます。

顔を立てるの使い方は?

「顔を立てる」の使い方として、5つの例文を紹介します。

  • 会議で部下の意見が採用されなかった時、上司が彼女の努力を公に認めて顔を立てた
  • 祖父の誕生日会で、私たちは彼の長年の趣味である園芸について賞賛し、顔を立てることにした。
  • 地元の商工会議所の会合ではしがらみが多く、参加者の意見に反対するよりも、相手の顔を立てた方が無難とされることが多い。
  • 私の顔を立てるために、今回のプレゼンテーションは私の提案を支持してくれないだろうか。必ずこの埋め合わせはするので。
  • チームで、キャプテンとエースの意見が対立したとき、コーチは両者の顔を立てるべく、チーム全体のためになる作戦を一緒に考えようと提案した。

顔を立てるの類義語は?

「顔を立てる」の類語として、以下の表現を紹介します。

脇に回る

主人公や中心的な役割を担う人や事柄をサポートし、注目を浴びない位置で必要な支援をすることを意味します。

表舞台に立たず、裏での支援に徹する行為を示します。

引き立て役になる

他者をより良く見せるために、自分は控える役割を担い、その人の才能や魅力が目立つようサポートすることです。

自身を背景に置き、他者の長所を際立たせ、目立たせる役割を果たすことを意味します。

花を持たせる

他の人が光り輝くよう、後押しや機会を提供することを意味します。

文字通りには、自らの成果や名声を他人に譲ることを表しています。

そこから、他者を前面に出し、その達成や功績を祝福する行動を指すようになりました。

面目(めんぼく)を立てる

他者の社会的地位や名誉、尊厳を維持するよう配慮することです。

他人が面子を失わないよう心配りをし、その名声や尊厳を保護し、尊敬する姿勢を指します。

他者を尊重し、その名誉や地位を損なわないよう行動する考え方を表しています。

義理を立てる

相手に対する義理や礼儀を重んじ、敬意を表す行動を意味します。

社会的なつながりや人間関係の中で、相手に対して敬意を示すために、特定の態度や行動を取ることを指します。

相手の感情や立場を尊重し、不快にさせないように配慮することに焦点を当てています。

顔を立てるの対義語は?

「顔を立てる」の対義語としては、恥をかかせる、名誉を傷つけるといった意味の言葉が当てはまります。

以下にそのような意味を持つ表現を紹介します。

面目(めんぼく)をつぶす

他人の評判や尊厳を損なう行動を意味します。

相手に恥をかかせ、社会的な立場を低下させることを指します。

顔に泥を塗る(かおにどろをぬる)

相手の名誉や評価を大きく下げる行為や、恥をかかせることを表します。

直接的には、他人の名声に傷をつけることによって、その人の社会的地位を低めることを意味します。

体面(たいめん)を傷つける

他人の公的なイメージや名誉、社会的な評価を損なうような行為を指します。

個人の尊厳や自尊心を傷つけることにもつながります。

煮え湯を飲ます(にえゆをのます)

他人に不快感や苦痛を与えること、または相手を困らせるような状況を作り出すことを意味します。

直接的には、意図的に不快な思いをさせることによって、その人の立場を悪化させる行為です。

特に信用している人を裏切るというニュアンスが含まれています。

顔を立てるの英語表現は?

「顔を立てる」の英語表現としては、save faceが考えられます。

他人の尊厳や名誉を保ち、社会的な立場を損なわせないように配慮する行動を指します。

例えば

He made a mistake, but I decided to not mention it in front of everyone to save his face.

(彼は間違いを犯したが、みんなの前ではそれを言わないことにして、彼の顔を立てた。)

という形で使うことができます。

まとめ

「顔を立てる」とは他人の名誉や尊厳を保ち、社会的地位を尊重する行動を意味します。

相手に敬意を表し、恥をかかせないよう配慮することを強調しています。

特に日本では体面を重んじるケースがよくあるので、適切に使うようにしたいところです。

度を超すと、単なるお世辞やおべっか使いになってしまいますが、誰かの「顔を立てる」ことは、相互尊重と社会的調和を促す文化的な行動と考えることができます。