「歳月人を待たず」ということわざがあります。

文字通り、歳月は人を待ってはくれないという意味です。

古代中国の詩に由来する言葉ですが、現在とは少し異なるニュアンスがあったようです。

この記事では、「歳月人を待たず」の意味と由来、例文から類義語や英語表現まで詳しく紹介しています。

歳月人を待たずの意味は?

「歳月人を待たず」は「さいげつひとをまたず」と読みます。

時間は人の都合を待ってはくれないという意味を持ちます。

時間が無情にも常に前進し続けること、そして人々がそれを止めたり、遅らせたりすることはできないという現実を示しています。

そこから、機会を逃さず、与えられた時間を大切に使うべきだという教訓も含んでいます。

歳月人を待たずの由来は?

「歳月人を待たず」は、中国の六朝時代、東晋の時代に活躍した詩人、陶潜による雑詩に起源を持ちます。

雑詩とは、特にテーマを定めずに心のままに自由に詠じた詩のことです。

詩の中で、陶潜は次のように述べています。

盛年不重來 一日難再晨
及時當勉勵 歳月不待人

書き下し文にすると「盛年重ねて来たらず、一日再びあしたなり難し、時に及んで当(當)に勉励すべし。歳月人を待たず。」

さらに現代語に訳すと「青春は再び戻ってこない、朝が再び訪れることはない。時間は待ってくれないので、瞬間瞬間を大切に生きるべきだ。歳月は人を待ってはくれない。」となります。

ただし、この一節では「勉励」という言葉が使われていますが、陶潜が伝えたかったのは、「酒を楽しんで生活を満喫する」ことだったようです。

つまりは、人生を楽しむことが大切であると説いていたのです。

それが時代を経て、いつの間にか、若い世代に勉学に励むよう勧める表現になったと考えられています。

歳月人を待たずの例文をご紹介

「歳月人を待たず」の使い方として、例文を5つ紹介します。

  • 歳月人を待たずというように、時間は限られたものだから、一瞬一瞬を大切に生き、今この瞬間を最大限に楽しむべきだ。
  • 夢を追い続ける彼に、父は歳月人を待たずとアドバイスした。今を逃したら、同じ機会は二度と来ないかもしれない。
  • 大学生活を怠けて過ごした結果、歳月人を待たずで、あっという間にその時間は終わりを迎えた。今はもっと勉学に励んでいたらと、後悔している。
  • 彼女は歳月人を待たずと心に刻み、遂に海外赴任のチャンスを受け入れ、自分のキャリアに新たな一歩を踏み出す決断をした。
  • 彼は長年の友人に再会した時、「歳月人を待たず、私たちももう若くない。今こそ、やりたかったことに挑戦する時だ」と言って、若かりし二人の夢であった世界一周の旅行計画を立てた。

歳月人を待たずの類義語をご紹介

「歳月人を待たず」の類義語として、以下の3つを紹介します。

光陰矢の如し(こういんやのごとし)

「時間は矢のように速く過ぎ去る」という意味を持ち、時間の経過の速さとそれを止めることができない無常を表しています。

人生は限られた時間しかなく、大切に使うべきだという教訓を含んでいます。

月日に関守なし(つきひにせきもりなし)

「時間には門番がいない」という意味で、時間は誰にも止められず、常に前進し続けることを意味します。

このことわざも、時間の貴重さと、それを無駄にしてはならないという警鐘を鳴らしています。

少年老い易く学成り難し(しょうねんおいやすくがくなりがたし)

「若い時期はあっという間に過ぎ去り、学問を身につけるのは難しい」という意味のことわざです。

若い時期の時間を大切にし、学びに励むべきだというメッセージを伝えています。

若いうちに学問や技能を身につけることの重要性を説いており、時間を有効活用することの大切さを強調しています。

歳月人を待たずの対義語をご紹介

「歳月人を待たず」の直接的な対義語をあげるのは難しいです。

対義語として近いものとしては、慌てたり急いだりすることを戒め、時にはゆっくりとしたアプローチがより良い結果をもたらすという意味を持つ表現が考えられます。

そのような意味を持つ表現を以下に3つ紹介します。

急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる)

「物事を急ぎ過ぎると、かえって失敗することが多い」という意味です。

慌てて行動することで生じるミスや不手際を指摘し、計画的に、落ち着いて物事を進めるべきだと教えています。

時間に追われることの弊害を警告し、慎重な行動の価値を強調します。

急がば回れ(いそがばまわれ)

「急ぐ場合には、遠回りをする方が結果的に早く目的地に着くことがある」という意味のことわざです。

直接的な方法よりも、間接的または遠回りの方法が最終的には時間や労力を節約できるという考えを表します。

焦ることなく時間をかけることの利点を説いています。

慌てる乞食は貰いが少ない(あわてるこじきはもらいがすくない)

「急いで行動する人は、結果的に得られるものが少なくなる」という意味を持つことわざです。

慌てることでチャンスを逃したり、他人に不快感を与えたりすることで、本来得られたはずの利益や好機を失うことを戒めています。

この表現も、落ち着いて行動することの重要性を強調しています。

歳月人を待たずの英語表現をご紹介

「歳月人を待たず」の英語表現としては、“Time and tide wait for no man.” があります。
「時間も潮の流れも人を待たない」という意味の英語のことわざです。

時間の経過と自然の力は誰の意志にも従わず、停止することなく進み続けるという無常観を伝えています。

人間は時間や自然の流れを制御することができず、その無情さと絶え間ない前進に対応して生きていく必要があるという教訓が込められています。

「歳月人を待たず」と同様に、時間の貴重さとそれを無駄に過ごしてはならないというメッセージを強く示しています。

まとめ

「歳月人を待たず」は、時間は人間の都合に関係なく進んでいくことを意味する表現です。

元々は日常を楽しむことを勧める意味合いだったようですが、現在では学びや成長への励ましの言葉としても受け取られます。

とはいえ、どちらの考えも間違ってはいないでしょう。

年齢や状況に応じて時間の使い方は変わってくるものです。

大切なのは、人生の瞬間において時間の価値を見出し、有意義に過ごすことだと言えますね。