「郷に入っては郷に従え」ということわざがあります。
新しい土地やグループに入ったら、その場所の慣習や風俗に従うべきだという意味を持ちます。
日常生活でもよく使われる表現ですね。
この記事では、「郷に入っては郷に従え」の意味と由来、例文から類義語や対義語まで詳しく紹介しています。
郷に入っては郷に従えの意味は?
「郷に入っては郷に従え」は「ごうにいってはごうにしたがえ」と読みます。
「入って」は「いって」と読み、 「はいって」でない点に注意が必要です。
意味は、新しい場所やコミュニティに入った際には、その地域の習慣やルールに従うべきだということです。
異なる文化や社会に適応し、尊重することの重要性を教える言葉です。
郷に入っては郷に従えの由来は?
「郷に入っては郷に従え」という諺の起源は、鎌倉時代から明治時代中期にかけて使用された初等教育用の教訓集「童子教」にあるとされています。
この教訓集は、7歳から15歳の子どもたちに向けて書かれ、基本的な道徳や仏教、儒教の教えを含む内容で構成されており、江戸時代には寺子屋で教材として広く用いられました。
「童子教」に記された「入郷而従郷、入俗而随俗」という言葉は、このことわざの直接的な由来となっています。
ただし、この表現の更なる起源は、中国の禅宗に関する歴史的文献「五灯会元」にさかのぼります。
この文献に記載された句から、「入郷随俗」という中国のことわざが生まれ、これが「郷に入っては郷に従え」と同じ意味を持つようになりました。
結果として、「郷に入っては郷に従え」という教えは「童子教」を通じて伝えられる形となり、その背後には中国の古いことわざが存在するということになります。
「郷に入っては郷に従え」は、地域ごとに異なる風習や慣習が色濃く存在した時代の日本において、新しい環境に適応し、その地域の習慣に従うことの重要性を示しています。
現代では、この諺は新たな場所での早期の適応や、旅行中の異文化体験への開放的な姿勢を促す意味でも引用されることがあります。
郷に入っては郷に従えの使い方をご紹介
「郷に入っては郷に従え」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 海外に留学した際、現地の文化や習慣が自分の国と大きく異なることに気づいた。しかし、郷に入っては郷に従えの精神で、積極的にその文化を受け入れることで、異文化理解の大切さを学んだ。
- 新しい職場に配属されたとき、郷に入っては郷に従えをモットーに、先輩たちのアドバイスを素直に受け入れ、すぐにチームに溶け込むことができた。
- 郷に入っては郷に従えというように、異国の地でビジネスを始める際、現地の法律やビジネス慣習を忠実に守ることが成功の鍵となる。
- 地方の小さな町に引っ越してきた家族は、地域の年中行事や慣習に参加することで、郷に入っては郷に従えの姿勢を見せ、近所の人々との絆を深めた。
- 地元の伝統祭りに参加することになり、初めての体験である祭り用の衣装を着るのに最初は少し戸惑った。でも、郷に入っては郷に従えという心持ちで衣装を身にまとい、結果として地域の人たちと一緒に踊りを楽しむことができた。
郷に入っては郷に従えの類義語をご紹介
「郷に入っては郷に従え」に似た意味を持つ言葉として、次の3つの表現を紹介します
ローマではローマ人のするようにせよ
異国の地にいる際にその国の風習や慣習に従うべきだという意味を持ちます。
具体的には、ローマにいる時はローマ人と同じ行動を取るべきという教えで、文化や習慣の違いに柔軟に対応することの重要性を示しています。
境に入りては禁を問う(さかいにいりてはきんをとう)
新しい場所に入ったらまずその地域の規則や禁止事項を学ぶべきだという意味です。
つまり、未知の環境に足を踏み入れた際には、その地のルールや慣習を理解し、それに従うべきという考え方を伝えています。
人の踊るときは踊れ(ひとのおどるときはおどれ)
周囲の人々が何かをしている時には、自分もそれに参加するべきだという意味を持ちます。
社会的な行事や集団活動において、共同体の一員としてその活動に積極的に参加し、周囲と調和を保つことの大切さを教えています。
郷に入っては郷に従えの対義語をご紹介
「郷に入っては郷に従え」の対義語としてふさわしいことわざや慣用句を挙げるのは難しいです。
あえて挙げるとすれば、「出る杭は打たれる」が考えられます。
個性を保持し、周囲に流されない姿勢を表す言葉です。
ただし、通常、社会や集団内で異質な存在や行動が抑圧されることを批判的に指摘する意味合いで使われるため、正確な対義語というよりは、異なる視点から社会的適応を考える際の参考になる表現です。
「郷に入っては郷に従え」が柔軟な適応を促すのに対し、「出る杭は打たれる」は個性や異質性が常に受け入れられるわけではないという社会の現実を示しています。
まとめ
「郷に入っては郷に従え」は、新しい環境やコミュニティに適応し、その場のルールや習慣を尊重することの大切さを教える日本のことわざです。
新しい場所での習慣を学び、尊重することは、スムーズに馴染むために重要です。
明らかにおかしなルールに従うのは考えものですが、風紀を乱すようなことをして、余計なトラブルは招かないようにしたいものです。
また、和を尊重し、その場の習慣に従うことは、日本の文化における礼節と美徳を象徴しているとも言えます。
異文化体験や対人関係においても、柔軟な姿勢と敬意を持つことは大切ですね。