シェイクスピアの悲劇といえば?
おそらく、「ロミオとジュリエット」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ですが、シェイクスピアの作品には、いわゆる四大悲劇があり、その中に「ロミオとジュリエット」は含まれていません。
意外に思われる方もいらっしゃるでしょう。
かく言う私も、高校生のときの英語の授業のときに初めて知りました。
四大悲劇という言葉を知ったのも、このときが初めてでした。
では、シェイクスピアの四大悲劇とは、いかなる作品なのかというと。
「ハムレット」「オセロ」「リア王」「マクベス」の4作品になります。
以下に、それぞれの概要を述べていきますが、まだ読んでいない方もいらっしゃると思いますので、ネタバレにならないように、軽く紹介していきたいと思います。
ハムレット
私が「ハムレット」を読んだのは、大学生のときです。
「To be or not to be, that is the question.(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)」という台詞は、あまりにも有名ですね。
主人公は、言わずと知れた、ハムレット。
ハムレットの父はデンマークの王でしたが、ある日突然急死し、父の弟すなわち叔父であるクローディアスが後を継ぎ、デンマークの新しき王となります。
また、ハムレットの母親のガートルードも、叔父のクローディアスと再婚し、引き続き王妃となります。
当然、ハムレットは意気消沈する日々を送ることになります。
そんなある日のこと、ハムレットは臣下から、先代の王の父の霊が夜になると出現するという話を聞きます。
その噂を確かめに行くと、実際に父の霊が現れ、ハムレットは父との再会を果たします。
しかし、ハムレットの父は、息子に衝撃の真実を告げました。
それを聞いたハムレットは…?
と、その後、ハムレットは思い悩みながらも、ある決断を下し、色々と画策をすることになるんですね。
すでに読んだ方ならご存じですが、ほんと、これでもか!というくらい、ちょっとしたボタンの掛け違いで、悲しい出来事が続いてしまいます。
正直、わざわざこんなに悲しい出来事を、立て続けに起こさなくてもいいやん!(汗)と思ってしまうくらい、きついものがあります。
そういうわけで、「ハムレット」は、王道を行く純粋な悲劇作品ではあるのですが、ちょっとひねくれてるなぁ~という印象がありますね。
オセロ
「オセロ」も、私が大学生のときに読みました。
主人公は、ヴェニスの軍人でムーア人であるオセロ。
オセロには、デズデモーナという恋人がおり、結婚することになります。
オセロ自身は、ヴェネチア軍の優秀な将軍で、周囲からの尊敬も厚いものがありました。
ところが、オセロが有色人種であったこともあり、白人のデズデモーナと一緒になるのに、快く思わない人物もかなりいました。
そこで、オセロに恨みを持つイアーゴという部下が、オセロを陥れようと謀略を図ります。
抜け目のないイアーゴは、あの手この手と策略をめぐらします。
このイアーゴの企みにより、オセロは残酷な運命をたどることになります。
さてさて、こんな感じで進むストーリーで、「オセロ」は、ある意味、とても分かりやすい悲劇だと思います。
とにかく、悲劇の担い手となるイアーゴが、腹立って仕方なくなりますね(汗)
もう、早く、こいつの悪だくみを暴いてくれ~!と、誰もが思うでしょう。
また、「オセロ」は、日本が発祥の地とされるボードゲームの「オセロ」の名前の由来となっているのは、有名ですね。
黒人のオセロと、白人のデスデモーナが翻弄される様子をモチーフにし、黒と白がせわしなく入れ替わるところから、名付けられたとされています。
リア王
「リア王」は、私が社会人になってから読みました。
主人公はリア王で、イングランドの国王。
高齢になったリア王は、3人の娘たちに領土を分け与えて、跡を継がそうと考えます。
そこで、娘たちがどれだけ自分のことを愛しているかを語らせます。
長女と次女は、リア王のご機嫌をとり、父への愛を大げさに語ります。
ところが、三女のコーデリアは、リア王の期待に応えることなく、率直に手短な言葉をかけるのみでした。
末娘の素っ気ない態度に、リア王は怒り心頭。
コーデリアを追放してしまいます。
しかし、この出来事が、後に大きな悲劇を生むことになるのでした…
と、まあ、この後に悲劇が待ち受けることになるのは、大体予想できますよね。
ただ、リア王の運命は、自身の傲慢さが招いたものであり、自業自得。
どう考えても、一番かわいそうなのは、末娘のコーデリア!
そんな仕打ちは、あまりにも残酷ですわ…
唯一の救いは、リア王が真実の愛に気づき、癒されたことですかね。
とはいえ、少しずつ癒しを得てから、物語は悲しい結末に一直線という、皮肉な展開になっています。
ほんと、やるせないわ~という気持ちになってしまいますね。
また、「リア王」は、複雑な人間模様や駆け引き、策略、決闘、さらにはイングランドとフランスの戦争まで織り交ぜ、かなり壮大なスペクタクルに仕上がっています。
マクベス
「マクベス」も、私が大学生のときに読みました。
主人公は、スコットランドの将軍マクベス。
ある日、戦争で勝利をあげ、友人である同じ将軍のバンクォーと共に陣営に変える途中で、3人の魔女に出くわします。
魔女たちは、2人に不思議な予言をします。
「マクベスはコーダーの領主になり、いずれ王になる」
「バンクォーは王にはならないが、子孫が王になる」
予言を告げた後、魔女たちは消えます。
すると、すぐさま、マクベスが武勲により新しくコーダーの領主に任命するという伝令が届きます。
予言が現実になったことに、当然、2人は驚きます。
その後、マクベスから事情を聞いたマクベス夫人は興奮し、夫が王になることを望むようになります。
マクベス本人はあまり乗り気ではありませんでしたが、夫人はマクベスを説得し、王座につくよう仕向けます。
やがて、マクベスもその気になり、自身が王になることを決意します。
そして、案の定、マクベスの野心が悲劇を生むことになります…
と、ネタバレにならないよう、この後の詳細を語ることはしませんが。
正直、「マクベス」で一番悪いのは、マクベスの奥さんでしょ!という印象を受けます。
奥さんの執着がなければ、残酷な運命をたどることはなかったはず。
また、悲劇とはいうものの、先述の「リア王」以上に、自業自得としか言いようがありません。
物語の最初は全く暗い雰囲気はないのですが、徐々に不気味さを増していき、ラスト手前までカオス状態です(汗)
あと、個人的には、「マクベス」は、ギリシャ神話のクロノスとゼウスのくだりと、「ニーベルンゲンの歌」を連想させます。
予言を実現しようとして、血みどろの闘争になるあたりは、クロノスのゼウスのくだり。
狂気に憑りつかれた妻が自滅していく様子は、ニーベルンゲンの歌。
そんな感じです。
それ以外にも、よく似たパターンの物語は数多くあるので、おそらく、「マクベス」のストーリーは、西洋にある程度共通する悲劇のテキストなのかなという印象があります。