北欧神話には、いくつかの文献で夜と昼、月と太陽に関する物語が結構詳しく記述されています。
それらによると、以下のようになります。
まず、ヨーツンヘイムにナルヴィ(ネルヴィ)という巨人が住んでいました。
ナルヴィにはノート(夜)という娘がいました。
ノートは黒髪で肌の黒い女性でした。
ノートはナグルファルという男性と結婚し、アウズという息子をもうけます。
次にアンナルという男性と結婚し、ヨルズという娘をもうけます。
三番目にアース神族のデリングという男性と結婚し、ダグ(昼)という息子をもうけます。
ダグは明るく、父親に似て美しい姿をしていました。
ノート(夜)とダグ(昼)はオーディンによって召し出され、馬に引かれた戦車を与えられ、それぞれ12時間ごとに大地のまわりを回るように天に置かれました。
夜が先に立ち、その後に昼が続きました。
夜を引っぱる馬はフリームファクシ(霜のたてがみ)と呼ばれ、くつわから泡を滴らせて大地を濡らします。
昼を引っぱる馬はスキンファクシ(光のたてがみ)と呼ばれ、天空と大地を光り輝かせました。
このようにして、世界に夜と昼が訪れるようになりました。
次に話は変わって、太陽と月のお話に移ります。
ミズガルズ(ミッドガルド)にムンディルフェールという男がいて、彼には2人の子供がいました。
子供たちはとても美しかったので、息子をマーニ(月)、娘をソール(太陽)と名付け、さらにその娘をグレンという男性に嫁がせました。
ところが、オーディンをはじめとするアース神族の神々はこの思い上がりに怒り、兄妹をとらえて、神々がムスペルから飛んでくる火花で作った太陽を引く馬の御者にしてしまいました。
マーニは月の運行をつかさどり、月の満ち欠けを決め、ソール(太陽)は月の後を追いかけます。
太陽の運行はとても速いものですが、その理由はスコールという狼に追われているからとされています。
また太陽の前にもハティと呼ばれる狼がいて、こちらの狼は月を捕まえようとしています。
月も太陽も常に狼に追いかけられているわけですが、最後には狼に飲み込まれる運命にあるとされています。
以上が、太陽と月にまつわるお話でした。
物語から分かるように、夜が先にあって昼が続き、月が先にあって太陽がその後を追いかけるとありますね。
これは、古代の北欧では一日が夜から始まり昼で終わると考えられていたことに由来するようです。
日数の数え方も「一日」ではなく、「一夜」というように夜を使っていました。
北欧は地球で緯度の高いところに位置するので、夏は日照時間が長く、逆に夜は短くなります。
特にアイスランドでは、冬の日照時間が3時間ほどです。
それだけお日さまが出ている時間が短いということになりますね。
この冬の日照時間の短さが、夜→昼、月→太陽という順番を考えださせたのかもしれません。