最近はスーパーで買い物することが多いとはいえ、今でも八百屋(やおや)は私たちの生活の中にしっかりと根付いています。

学校で習う「八百屋」という漢字も、なじみ深いものだと思います。

ただ、「八百屋」は漢字も読み方も独特で、その由来が気になる方も多いでしょう。

この記事では、八百屋という名前がどのようにして生まれ、なぜ「やおや」と呼ばれるようになったのかを詳しく説明しています。

八百屋と呼ばれるようになったのはなぜ?

「八百屋」とは、野菜や果物などを取り扱うお店のことですね。

ですが、「八百」という言葉には、直接的に「野菜や果物」という意味合いは含まれていません。

では、なぜ「八百屋」と呼ばれるようになったのかと言うと?

その起源が野菜を指す古い呼称に由来するためです。

一般的に、野菜や果物は「青物」と総称されることがあります。

この「青物」という語は、室町時代の初期に、皇室や貴族の女官たちが生活の中で使い始めたものです。

この時代に、野菜の色を指して「青物」と呼んだことから広まり、やがて「野菜」を指す言葉として定着していったようです。

そして、野菜や果物を販売するお店は「青物を扱う店」として知られるようになり、「青屋」という名前で呼ばれるようになりました。

この「青屋」が時間を経て変化し、「八百屋(やおや)」という現在の呼び名になったというわけです。

ただ、そうは言っても、なぜ「あおや」が「やおや」に変化したのか、その理由が気になりますね。

これには2つの説があるようです。
以下に詳しく説明します。

発音しやすいから

1つ目の説は、単に「やおや」の方が言いやすいからというものです。

言葉というものは、発音しやすくなる方向へと自然に変化することがよくあります。

「やおや」もそのような変化の一例であるということです。

実際に発音してみると、「あおや」より「やおや」の方が言いやすいかもしれません。

なので、「あおや」がなまって、いつしか「やおや」と発音されるようになったと考えられるわけです。

藍染め業者と区別するため

もう1つの説として、藍染め業者と区別するためというものがあります。

実は「青屋」は、野菜や果物を扱うお店だけでなく、藍染めを行う業者のことも意味していました。

藍染めが青色であるために、藍染め業者を「青屋」と読んでいたのです。

そのため、藍染めを行う「青屋」と区別する目的で、野菜や果物を扱うお店を「やおや」と呼ぶようにしたと考えられています。


もちろん、正確なことは分かりませんが、どちらの説も正しいという気がします。

例えば、藍染め業者との混同を避けるために異なる呼び方が必要だったときに、たまたま発音しやすい「やおや」という言葉を使う人々がたくさんいたので、「やおや」が選ばれたということです。

言葉の変化には複数の原因が組み合わさっていることが多いので、「やおや」も実用性と発音のしやすさの両方の理由から成立したと考えることもできるでしょう。

なぜ八百屋という漢字が使われた?

以上のように、「やおや」は「おあや」が変化したものですが、では何故「八百屋」という漢字が使われているのでしょうか?

一言でその理由を説明すると、「やおや」がたくさんの種類の野菜や果物を取り扱っているからです。

日本において、「八百(やお/はっぴゃく)」という表現は、文字通りの「800」という数字だけでなく、「数えきれないほど多い」という意味でも用いられてきました。

例えば、日本にはたくさんの神様がいるという意味で「八百万の神(やおよろずのかみ)」と表現します。

また、非常に多くの嘘や、言っていることの全てが嘘であることを「噓八百(うそはっぴゃく)」と言います。

そして、「やおや」でも幅広い品種の野菜や果物が提供されており、実際にその数は数えきれないほど多いものです。

この数の多さを象徴する意味で、「八百屋」という漢字が割り当てられたと考えられています。

まとめ

「やおや」という呼称には、発音のしやすさと藍染め業者との区別の必要性という2つの説があります。

正確なことは分かりませんが、両方の説が組み合わさっていると考えることもできます。

また「八百屋」という漢字は、多種多様な野菜や果物を扱う店の特徴を象徴していると考えられています。

最近はスーパーマーケットで買い物をすることが多いと思いますが、今でも古い町並みや下町で八百屋さんはよく見かけます。

時にはスーパーでは売っていない珍しいものを取り扱っていることもあります。

背後にある歴史や文化を思い浮かべながら、お近くの八百屋さんの品揃えを観察してみるのも面白いと思います。