「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそうかぶせもあれ)」ということわざがあります。
自分の身を犠牲にする覚悟で取り組めば、危機を脱し、活路を見出せるという意味です。
この記事では、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の意味と由来、類義語や対義語も詳しく説明しています。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの意味は?
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ということわざは、自分の安全や利益を捨てることで、逆に大きな成功や成果を得ることができるという意味です。
大きなリスクを取ることが時には必要で、それによって大きなチャンスを掴むことができるという教訓を含んでいます。
人が水に落ちてしまうと、パニックに陥りがちで、必死に手足を動かしてもがくことがあります。
ですが、このような行動は、逆に危険な状況を悪化させることがあります。
逆に、思い切って身を任せ、水の流れに身を委ねることで、安全な場所に辿り着くことができることもあります。
多くの人は、リラックスして体を水に浮かべると、自然と浮力が働きます。
この状態が、まさに「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」となります。
自分の命を危険に晒すような決断を下すことで、逆に安全な道が開けることもあるということです。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの由来は?
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の由来については、諸説あるようです。
江戸時代の仮名草子に「ものゝふのやたけ心のひとすじに身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という句があり、江戸時代には知られていた表現と考えられます。
また、平安時代の僧侶・空也上人の伝記である「空也上人絵詞伝」に「山川の末に流るる橡穀(とちがら)も身を捨ててこそ浮かむ瀬もあれ」という和歌が収められています。
これは、空也上人が詠んだものとされていますが、真偽のほどは不明です。
もともと、空也上人の生涯は謎に満ちており、当時の史料ではほとんど確認できません。
ただ、「空也上人絵詞伝」が刊行されたのは、江戸時代中期なので、やはりこの頃には「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉が成立していたと考えられます。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの使い方は?
ここでは「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 会社を辞めて起業する決断は簡単ではなかったが、まさに身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの精神で、今では成功を収めている。
- 彼はスランプに陥っていたが、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれだと決心し、厳しいトレーニングに取り組んだ結果、大会で優勝した。
- 彼女は身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれという覚悟で、全財産を使って新しいビジネスに投資した。そのリスクが大きなリターンをもたらした。
- 人生には予測不可能な局面が訪れることも多い。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれという大胆な決断が必要になることもある。
- 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれというように、彼女は恐怖を乗り越えてステージに立った。その勇気が彼女をスターダムへと導いた。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの類義語は?
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」のよく似た意味を持つ表現として、以下の3つを紹介します。
肉を切らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ)
大きな目的を達成するためには、大きな犠牲や苦痛を伴うことがあるという意味です。
文字通りには、「肉を切り取って骨を断つ」という意味で、深刻な痛みや損失を伴う決断や行動を指します。
虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
「虎の子を手に入れるためには、危険な虎の巣穴に入らなければならない」という意味で、大きなリスクを冒さなければ、大きな報酬や成功は得られないという教訓を表しています。
重賞の下には死士あり(じゅうしょうのしたにはししあり)
「重い報酬がある場所には、命を捨てる覚悟のある者がいる」という意味です。
大きな報酬や名誉を得るためには、それに見合うだけの大きなリスクや犠牲を払う覚悟が必要であるということを示しています。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの対義語は?
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の反対の意味を持つ表現として、「命あっての物種(いのちあってのものだね)」があげられます。
どんなに大きな成功や利益があっても、それらは命があってこそという意味です。
つまり、無謀なリスクを避け、生命や安全を最優先にするべきだという考え方を示しています。
まとめ
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ということわざは、自分の安全や利益を捨てることで、逆に大きな成功や成果を得ることができるという意味です。
もちろん、自分の身の安全が最も大切なことです。
とはいえ、人生において大きなリスクを冒すことが必要なときもあるでしょう。
簡単なことではありませんが、そういう時こそ、腹をくくって、焦らずに取り組んでいきたいものですね。