「冷や飯を食う(ひやめしをくう)」という慣用句があります。

冷たい仕打ちをされたり、冷遇される状況を意味します。

現在もよく使われる表現ですね。

この記事では、「冷や飯を食う」の意味と由来、類義語や対義語も詳しく説明しています。

冷や飯を食うの意味は?

「冷や飯を食う」という表現は、冷たい扱いをうけたり、冷遇されることを意味します。

もともとは、文字通り、冷たいご飯を食べる様子を表していました。

そこから転じて、状況が悪化したり、我慢を強いられることを指すようになりました。

「冷や飯を食わされる」という言い回しもあります。

冷や飯を食うの由来は?

「冷や飯を食う」という表現の起源ははっきりしていませんが、1780年に志水燕十が書いた洒落本「一騎夜行」に、「松風の飾り道具となり、石見銀山もこれがために冷や飯を食う」という記述が見られます。

そのため、江戸時代の中期から後期にかけてこの表現が知られていたと考えられます。

洒落本とは、江戸時代中期に流行した文学の一種で、主に遊廓や遊所での遊びに関する内容が多く、粋な生活や遊女と客のやり取り、野暮な客をからかう話などが含まれているものです。

単に話の楽しみだけでなく、遊び方の指南やガイドブックとしても利用されていました。

また、「冷や飯を食う」は、日本の伝統的な「家長制度」に由来すると考えられています。

かつては、家の跡取りである長男が特別扱いされ、財産相続も長男が中心でした。
特に鎌倉時代以降の武家社会では、この制度が一般的でした。

この制度の下では、家長と長男が食事を先にし、次男以下は彼らが食べ終わるまで待たなければなりません。
当時はご飯を温める器具はなかったので、次男以下が食べる頃にはご飯は冷え切っていました。

兄弟間での争いを避けるためにこのような決まりがあったものの、兄弟でありながら待遇に大きな差があったのです。

もちろん、現代ではこのような習慣はほとんど見られませんが、一昔前の相撲界など、上下関係が厳しい体育会系の世界では、この風習が色濃く残っていたと言われています。

こうした背景から、「冷や飯を食う」という表現は、冷遇されることや不利な扱いを受けることを意味するようになったとされています。

冷や飯を食うの使い方は?

ここでは「冷や飯を食う」の使い方として、5つの例文を紹介します。

  • 彼は会社での失敗が原因で立場が弱まり、かつての同僚たちからも避けられるようになり、まさに冷や飯を食う状況に陥ってしまった。
  • 昇進のチャンスを逃した後、彼女は同僚たちからの扱いが一変し、まるで冷や飯を食わされるような状態になった。
  • 彼は新しいクラブ活動のリーダーから外され、冷や飯を食う日々を送っている。以前はクラスの中心人物だったが、学校での立場が一変し、今では友達の輪からも外れるようになった。
  • 党内での立場が弱まってから、彼は同僚議員たちからの冷たい視線を感じ、冷や飯を食わされるような扱いを受けている。かつては彼の発言は重要視されたが、今では議会での影響力を失っている。
  • いとこの結婚式での失言がもとで、親戚一同から孤立し、冷や飯を食う羽目になった。家族行事にも招かれなくなり、今ではあのときの発言を深く後悔している。

冷や飯を食うの類義語は?

「冷や飯を食う」のよく似た意味を持つ表現として、以下の2つを紹介します。

蚊帳の外に置かれる(かやのそとにおかれる)

重要な議論や決定から外されることを意味します。

文字通りには、蚊帳の内側で行われることから外される様子を表しています。

比喩的に、集団の中で孤立し、不利な扱いを受けることを指すようになりました。

割を食う(わりをくう)

不利益や損害を被ることを意味します。

特に、他人の行動や状況の結果として、不当に損害を受ける状況を指すことが多いです。

不公平な扱いや不運な結果を受け入れることを示しています。

冷や飯を食うの対義語は?

「冷や飯を食う」の反対の意味を持つ表現も紹介します。

至れり尽くせり(いたれりつくせり)

細かいところまで行き届いた丁寧な対応やサービスを意味します。

何もかもが完璧に整えられ、何一つ不足がない状態を指します。
特に、ホスピタリティやサービス業でよく使われる表現です。

かゆいところに手が届く(かゆいところにてがとどく)

細かいところまで配慮が行き届いている様子を意味します。

かゆいところを掻いてもらっているように、満足感や安心感を与える状況を表します。

下にも置かない(したにもおかない)

非常に大切に扱うこと、あるいは丁寧にもてなすことを意味します。

文字通りには、物を地面に置かないほど大事にする様子を表し、比喩的に、人や物をとても大切に扱うことを指しています。

まとめ

「冷や飯を食う」という表現は、冷たい仕打ちをされたり、冷遇される状況を意味します。

江戸時代には、すでに知られていた言葉と考えられます。

武家社会の伝統的な家長制度に由来するようですが、昔は長男が優遇され、次男以下は文字通り、冷えたご飯を食べなければならない時代がありました。

実際に、家督争いで兄弟が戦うということも珍しくなかったため、その争いを避けるために、こういった習慣があったのも事実です。

ですが、必ずしも兄弟で争ってばかりというわけではなく、支え合うというケースもあります。

昔の武家社会では、どちらがよいのかは一概には言えないでしょう。

ただ、少なくとも現代においては、協力し合い、互いを尊重することが何よりも大切ですね。