「三尺下がって師の影を踏まず(さんじゃくさがってしのかげをふまず)」ということわざがあります。
師匠や尊敬する人物に対する礼儀を説いた言葉です。
普段はあまり使われることはないかもしれませんが、礼節を重んじる場面では、ぜひとも覚えておきたい表現です。
この記事では、「三尺下がって師の影を踏まず」の意味と由来、例文から類義語まで詳しく紹介しています。
三尺下がって師の影を踏まずの意味は?
「三尺下がって師の影を踏まず」は、尊敬や敬意を表す行動を意味します。
具体的には、師や上司など、敬うべき人物の直後を歩かず、少し距離を置いて歩くことを指します。
これは、相手に対する礼儀や尊重の表れとされています。
また、比喩的に、自分の考えや行動を他人に依存せず、独立した立場を保つという意味で使われることもあります。
三尺下がって師の影を踏まずの由来は?
「三尺下がって師の影を踏まず」は、古代中国の僧侶道宣が記した「教誡律儀」という文献にその起源を持ちます。
この文献は、僧侶が守るべき規律に関する指導を含んでいます。
「教誡律儀」には、「師に従う際には、大声で笑ったり、師の影を踏んだりしてはならない。少なくとも七尺(約2メートル)の距離を保つべき」という教えが記されています。
この教えは、師匠に対する尊敬と礼儀を示すものであり、師匠の影すら踏むことは許されないとされています。
そのため、弟子は師匠から適切な距離を保って歩くべきだとされています。
日本においては、この教えは「北条氏直時代諺留」という戦国時代から安土桃山時代にかけての諺を集めた書物にも記載されており、「三尺下がって師の影を踏まず」という形で広まりました。
日本では、元々の七尺ではなく、三尺という表現が一般的になっています。
なお、1尺は約30センチメートルに相当します。
したがって、七尺は約2メートル、三尺は約1メートルとなります。
三尺下がって師の影を踏まずの使い方は?
続いて、「三尺下がって師の影を踏まず」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 伝統的な茶道のクラスでは、先生の動きを観察する際、生徒たちは三尺下がって師の影を踏まずの原則に従い、適切な距離を保ちながら学んだ。
- 三尺下がって師の影を踏まずを守りつつ、師匠の技術を学ぶことは大切だが、それに囚われずに自分のスタイルを見つけることも同じくらい重要だ。
- 社長が会議室に入るとき、部下たちは三尺下がって師の影を踏まずの精神で、敬意を表して距離を保ちながら入室した。
- 新人研修で、先輩は新入社員に対して、三尺下がって師の影を踏まずという態度で上司や先輩に接することの重要性を説いた。
- ミーティングでの発言に際して、三尺下がって師の影を踏まずを念頭に置きつつ、尊敬する上司の意見に対しても、自分の考えをしっかりと述べた。
三尺下がって師の影を踏まずの類義語は?
次に、「三尺下がって師の影を踏まず」の類語表現として、以下の3つを紹介します。
三尺去って師の影を踏まず(さんじゃくさってしのかげをふまず)
「三尺下がって師の影を踏まず」の「下がって」が「去って」となり、ほぼ同じ意味です。
師の影を蹋むを得ず(しのかげをふむをえず)
「師や尊敬する人の影を踏むことは許されない」という意味です。
尊敬する人に対して、大きな敬意を払うべきであるという教えを表しています。
相去ること七尺なるべし(あいさることしちしゃくなるべし)
「師や尊敬する人とは七尺(約2メートル)の距離を保つべき」という意味です。
こちらも、尊敬する人に対して適切な空間的距離を保ち、礼儀正しく行動することの重要性を強調しています。
まとめ
「三尺下がって師の影を踏まず」という表現は、尊敬と敬意を示す日本の古いことわざです。
この記事では、その意味、由来、使い方、そして類義語までを詳しく解説しました。
日常生活であまり使われないかもしれませんが、礼節を重んじる場面では重要な表現なので、理解を深めておきたいですね。