「とりとめもない」という表現は、日常会話や文章でよく使われるフレーズですね。
ですが、その詳しい意味や使い方については意外と知られていないかもしれません。
また、似たような言葉として「とりとめのない」という表現もあります。
これらに違いはあるのでしょうか?
この記事では、そんな疑問に答えるべく、「とりとめもない」の意味と使い方について詳しく説明しています。
そして、芥川龍之介の「羅生門」で「とりとめもない」が使われているので、その具体例も紹介していきます。
とりとめもないの意味は?
「とりとめもない」という言葉は、「まとまりがない」や「重要でない」といった様子を指します。
例えば、「とりとめのない会話」や「とりとめのない文章」などの形で使われます。
とりとめもないを漢字で書くと、「取り留めの無い」または「取留の無い」となります。
ここで、「とりとめ(取り留め)」は「まとまり」や「定めた目的」「押さえ留めること」を意味する言葉です。
したがって、とりとめもないとは、「話の結論や結末がない、まとまっていない」という意味になります。
日本語における「とりとめもない」という表現は、日本のコミュニケーションスタイルを反映しています。
日本では、直接的で断定的な表現よりも、柔らかく、曖昧な表現が好まれる傾向があります。
そのため、とりとめもないは、話し手が自分の意見を控えめに表現するときによく用いられます。
特に若者の間で頻繁に使われる傾向があるようです。
SNSや日常会話で、自分の考えを控えめに表現する際に選ばれることが多いです。
このように、「とりとめもない」という言葉は、日本語の繊細なニュアンスを表現するのに適した言葉といえます。
とりとめがないとの違いは?
「とりとめもない」とよく似た言葉で、「とりとめがない」がありますね。
基本的に同じ意味で、とりとめがないも「まとまりがない」や「重要でない」ことを表現する際に用いられる表現です。
例えば、「あの人の文章にはとりとめがない」「とりとめもないことが頭に浮かんできた」といった使い方があります。
羅生門での用例をご紹介!
芥川龍之介の有名な短編小説「羅生門」で、「とりとめもない」が使われています。
「羅生門」における「とりとめもない」の用例は、主人公である下人が羅生門の下で雨宿りをしている場面で見られます。
このシーンでは、下人は雨が止むのを待ちながら、自分の将来についての不安や途方に暮れた感情を抱えています。
彼は、どうにもならない事態をどうにかしようとして、「とりとめもない考え」を巡らせていると、表現されています。
この表現は、下人の心理状態を見事に描写していますね。
彼は生活の困窮や将来への不安から、まとまりのない、方向性を見失った思考に陥っています。
そして、「とりとめもない考え」というフレーズで、下人の心の動揺や迷いを表現し、読者に彼の内面の葛藤を感じさせているというわけです。
芥川龍之介の「羅生門」は30分もあれば読めるので、まだ読んだことがないという方は、ぜひご一読ください!
とりとめもないの類語は?
「とりとめもない」の類語は色々ありますが、ここでは5つの言葉を紹介します。
- たわいのない:重要でない、些細なことを指す表現です
- しどろもどろ:言葉がまとまらず、混乱している様子を表します
- 抽象的に:具体性がなく、漠然としている様子を指します
- 漠然と:はっきりしない、ぼんやりとした様子を表します
- 支離滅裂:話や文章がバラバラで一貫性を欠き、矛盾している様子を表します
以上の類語は、とりとめもないと同様に、話や考えが散漫で、焦点や目的が定まっていない状況を表現するのに使われます。
とりとめもないの使い方は?
先ほど「羅生門」での用例を紹介しましたが、現在も同じような意味合いで使われます。
ここでは、「とりとめもない」の使い方として、5つの例文を紹介します。
- 昨日の会議はとりとめもない話ばかりで、結局何も決まらなかった。
- 今日はとりとめもない一日だった。特に何をするわけでもなく、時間だけが過ぎていった。
- 彼女との電話はいつもとりとめもない話題でいっぱいだけど、それが楽しい。
- 最近、自分の思考がとりとめもなく、もっと具体的な目標を持って行動しないといけないと感じている。
- 彼の書いたレポートはとりとめもない内容で、主要なポイントが見えてこない。
これらの例文は、とりとめもないという表現がどのような文脈で使われるかを示しています。
会話や文章、日常生活の中で、目的や焦点が定まっていないことを表現する際に役立つので、ぜひ参考にしてくださればと思います。
まとめ
「とりとめもない」・「とりとめのない」は両方とも同じ意味で、目的や焦点が定まっていない状況を表すときに使われます。
日常会話でもよく使われるので、意味と使い方は押さえておきたいところですね。
また、芥川龍之介の「羅生門」では、この「とりとめもない」という表現が日本語の繊細なニュアンスを見事に捉えています。
すぐに読み終えることができるので、ぜひ「羅生門」を通じて、言葉の奥深さを実感していただければと思います