イグドラシルの構成
イグドラシル(またはユグドラシル)とは、北欧神話の世界を支えるトネリコでできた世界樹のことです。
古ノルド語で「Yggdrasill」 と表記され、その語源は 「Ygg’s horse」 (←「Ygg(恐ろしき者)」+「horse(馬)」=「恐ろしき者の馬」という意味)と考えられています。
いつ誕生したのか?その起源は知られておらず、また神々が死を迎えるラグナロクの後も生き延びるとされています。
つまりが、永遠に生き続ける樹ということですね。
北欧神話では、世界は3つの平面と9つの世界で構成されていると考えられおり、イグドラシルはその全ての世界をつらぬいているとされています。
北欧神話の文献の一つであるスノリのエッダでは、
その枝は全世界の上に広がり、天にまでとどく
と記されています。
イグドラシルには3本の巨大な根があり、それぞれが3つの平面のアースガルズ、ミズガルズ、ニヴルヘイムに通じています。
さらに詳しく述べると、第1の根はアースガルズにあるウルズの泉、第2の根はミズガルズにあるミーミルの泉、第3の根はニヴルヘイムにあるフヴェルゲルミルの泉に達しています。
この3つの平面と9つの世界の関係はややこしくて分かりにくいと思うので、またいつか別の機会に詳しく解説させていただきます。
おおざっぱに言ってしまえば、
- アースガルズ→神々の住む世界
- ミズガルズ→人間の住む世界
- ニヴルヘイム→死者の住む世界
というところです。
また、
- ウルズの泉→運命をつかさどるノルン三姉妹が住んでいるところ
- ミーミルの泉→オーディンが水を飲むために片目をささげたところ
- フヴェルゲルミルの泉→巨大な蛇のニーズヘッグが住んでいるところ
となります。
イグドラシルはいつも苦しんでいる?
イグドラシルは永遠に生き延びる世界樹ですが、実は毎日危機にひんしているとされています。
どういうことかと言うと、北欧神話に存在するあらゆる生き物がイグドラシルを攻撃しているんです。
イグドラシルの上部では、4頭の牡鹿が枝から若葉をむしって食べています。
イグドラシルの真下には無数の蛇がいて、同じように若葉を食べています。
そして、フヴェルゲルミルの泉ではニーズヘッグが枝そのものをかじっています。
そういうわけで、イグドラシルはいつ枯れ果てても仕方がない状態にあるということです。
それでも、なぜイグドラシルが永遠の命を保っていられるのかというと。
ウルズの泉で、運命の女神であるノルン三姉妹がイグドラシルが枯れないように、毎日泉の水をイグドラシルにかけているからです。
神話上に存在する永遠の木でありながら、何もしないと枯れてしまうというのは、何とも現実的な描写ですね。
さて、イグドラシルのような世界を支える樹という考えは世界各地の神話で見られます。
北はシベリア地方、南はマヤ・アステカ文明まで、世界樹が宇宙を支える元となっているという考えが存在します。
旧約聖書のアダムとイブがリンゴをかじった樹も、世界の中心にある樹ということで、この類型の一つと考えられるかもしれません。