アメノミナカヌシ神の概略

「天之御中主」と書いて、「アメノミナカヌシ」と読みます。

名前の意味は「天の真中に立つ神」といったところです。
宇宙の中心に位置する神というわけでなので、日本神話の神々の筆頭に立つ、とても偉い神様になります。
日本神話における最高神と言ってもよいでしょう。

例えば、古事記の上の巻に次のような記述があります。

「天地のはじめ」

天地の初発の時、高天の原に成りませる神の名は、天の御中主の神。
次に高御産巣日の神、次に神御産巣日の神。
この三柱の神は、みな独神に成りまして、身を隠したまひき。

古事記の物語の最初に現れた神様なので、その重要性が分かると思います。

ところが、具体的に何をした神様なのかは全くの謎です。
というより、何もしておらず、日本神話において何らかの業績を残したという記録はありません。
どのような姿をしていたのかも、全く分かっていません。
古事記にも日本書紀にも、その名前が出てくるだけなんです。

先の古事記の記述を見ても分かる通り、出現したと思ったら、すぐに身を隠してしまっていますよね。
なので、最高神、至上神と言える存在でありながら、具体的な行動は何も行っていないという神様です。


ただ、このような例は、実はそれほど珍しいというわけでもないんです。
神話学では、「眠る神」といって、最高神や創造神は何もしない抽象的な存在のまま、あるいは天地を創造した後、姿を隠して一切物語に関わらないというケースはよく知られています。

例えば、インドの創造神であるブラフマーや、日本神話でも後に登場するイザナギ神、ユダヤ・キリスト・イスラム教での唯一神もそういう性質を持っていると考えらます。
その他、各地のマイナーな神話伝承でも、眠る神はよく見られます。
天之御中主神も、その類型の一つと考えてよいかと思います。


そうした浮世離れした存在であるため、少なくとも庶民の間ではしばらく信仰の対象とはならなかったようです。

ところが、室町時代あたりから、日蓮宗における妙見菩薩と習合して信仰されるようになったと言われています。
これは、天之御中主神が中国の道教による北極星信仰の影響を受けて成立したと考えられているからです。

妙見菩薩は、もともと北極星が神格化された菩薩です。
なので、天之御中主神は妙見菩薩と同一の神様と考えられるようになり、庶民にも信仰されるに至ったというわけです。

アメノミナカヌシ神を祀る神社

前述の通り、妙見信仰が伝わるまでは、信仰の対象とはなりませんでした。
ですが、明治時代の神仏分離令で、妙見神を祀っていた多くの神社が天之御中主神を祭神とするようになりました。

  • 千葉神社
  • 青麻神社
  • 秩父神社
  • 岡太神社

など。