会社には色々な形態があります。
基本的に、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4種類となります。

有限会社は、2006年の会社法の施行により、新たに設立することはできなくなりました。
また、保険会社に見られる相互会社は、営利を目的とする会社法上の会社とは性質が全く異なるものです。

上記2つの会社は省くとして…

ややこしいのは、合同会社、合資会社、合名会社の違いでしょう。
それぞれの会社の名称と社員の組み合わせが、なかなか覚えられない!

しかも、現在は、大学受験の政治経済の科目で問われることがあるんですね。

私の場合は、2006年当時すでに会社員で、法務関係の部署にいたので、やたらと慌ただしかったのを覚えています。

今でこそ当たり前のように実務でこなしたことがあるものの、最初はこの3つの違いを覚えるのに少し混乱しました(汗)

というわけで、今回は、合同・合資・合名会社の簡単な覚え方と、それぞれの違いについて分かりやすく説明していきたいと思います。

とりあえず合同・合資・合名会社の簡単な覚え方をご紹介!

まず、それぞれの会社を超簡潔に説明すると

  • 合名会社:無限責任社員だけで構成
  • 合同会社:有限責任社員だけで構成
  • 合資会社:無限責任社員と有限責任社員で構成

となります。

で、これをどう覚えるか?ということですが。

私は、最初イメージとして

  • 合名会社:無限責任社員名前が同じ人たち
  • 合同会社:責任が有限同じ人たち
  • 合資会社:色々な人(無限と有限の人)出資している

という感じで、何となく捉えていました。

ですが、さすがにこれだけと覚えにくいかもしれないですね(汗)

なので、もっと簡潔にすると

  • 無名(むめい)無限責任社員のみ・合名会社
  • 有同(ゆうどう)有限責任社員のみ・合同会社
  • 有無資(うむし)有限と無限責任社員の両方・合資会社

と、かなり強引ではありますが…

まず、無名と有同と覚えてしまえば、残りの合資は両方であると記憶しやすいと思います。

あるいは、むめいゆうどうむゆうし→むりし(無有資→無利子)と、こじつけてしまいます。

これで、ある程度は頭に残りやすいかと思います。

ちょっと無理やりなところはありますが、ご参考になれば幸いです。

無限責任と有限責任とはどういう意味?

そもそも、無限責任と有限責任とはどういう意味なのか?

これは押さえておかないと、先に進めないので、しっかりとインプットしておく必要があります。
覚えてしまえば簡単で、何も難しいことはありません。

それぞれ簡単に説明すると

  • 無限責任:会社債権者に対して、債務全額について無限の責任を負う
  • 有限責任:会社債権者に対して、一定の金額についてのみ責任を負う

となります。

例えば、会社が1,000万円の借金をしたとして、それが返せなくなったとします。

この場合、無限責任の社員は、その1,000万円全額を債権者に返済しなければいけません。

一方、有限責任の社員は、債権者に対する義務が自身が出資した金額に限定されます。
会社に出資している額が100万円だった場合は、返済する義務は100万が上限になるということです。

なお、株式会社の株主は、もちろん有限責任です。
株式の引受価格を限度として、責任を負うことになります。

それぞれの会社の特徴は?

続いて、合名・合同・合資会社について、詳しく説明していきます。

ここから、専門用語なども出てきて、少し話がややこしくなります。

例えば、債務の履行や弁済という言葉が出てきますが、どちらも同じ意味です。
債務者が債務の本来の目的に従って給付を行うことにより、債権が消滅することを言います。

簡単に言うと、借りていたものを返したり、買ったものの支払いをすることです。

1,000万円を借りていた場合、貸主に1,000万円を返せば、弁済=債務の履行。
1,000万円で買ったものがあれば、売主に1,000万を支払うのも、弁済=債務の履行。

当たり前のことですが、法律用語では弁済、債務の履行と言います。

また、社員という用語も、一般的には会社の従業員を指しますが、会社法では出資者のことを言います。

なお、合名・合資・合同会社は株式会社と区分され、持分会社と呼ばれます。

図示すると、次のようになります。

会社の種類

合名会社とは?

先ほど述べたとおり、無限責任社員だけで構成される会社です。

当然ですが、会社が負担した債務は、基本的に会社に帰属することになります。

ところが、会社の財産で債務を履行できないときは、無限責任社員は債権者に対して直接責任を負うこととなります。
債権者の請求があれば、無限責任社員はその請求に応えなければいけません。

また、合名会社に社員が複数名いる場合は、各社員は債権者に対して連帯債務を負うことになります。

つまり、債権者は各社員のうち1人に対してでも債務の履行を請求できるということです。
そして、責任の範囲に上限はないので、債権者は1人の社員に債務の全額を請求することができます。

例えば、債務の全額が1,000万円として、社員が2人いた場合、それぞれの社員は500万円ずつの債務を負うということではありません。
2人とも各自が1,000万円全額の債務を負うということになります。

さらに、請求された社員が任意に弁済しないときは、債権者は社員の財産に強制執行することができます。

合名会社の社員の責任範囲の図解

合同会社とは?

合名会社は、2006年に施行された会社法により、新しく設けられた会社形態です。

先述のとおり、会社の構成員は有限責任社員のみとなります。

有限責任なので、社員は会社の債権者に対して出資額を限度とする責任だけを負います。

さらに、合同会社を設立するとき、社員になる者は会社に出資する資産の全額を払い込まなければなりません。
したがって、合同会社が成立したときは、すでに社員は出資が履行済みということになります。

そのため、会社の債権者は、合同会社の債務について、社員個人には請求できないことになります。

合同会社と構成社員の責任範囲の図解

この点は、株式会社の仕組みと似ています。

ですが、合同会社では

  • 利益の分配や議決権など、自由に決めることができる
  • 株式会社の株主と異なり、経営に参加することができる
  • 退社する際に、出資した金額を払い戻してもらうことができる

など、株式会社と大きな違いがあります。

合資会社とは?

合資会社も先述しましたが、無限責任社員と有限責任社員によって構成されます。

会社が債務を負った場合、会社が債務を履行しないといけないのが基本です。

ですが、会社の財産では弁済できない場合、債権者は社員に対して直接弁済を請求できます。

ただし、無限責任社員に対しては債務の全額を請求できますが、有限責任社員には出資価格を限度として請求することができるにすぎないということになります。

合資会社と構成社員の責任範囲の図解

また、合資会社は、無限責任社員と有限責任社員の2種類の社員の存在が必要となるので、最低でも2人の社員がいることになります。

対して、合名会社と合同会社は、1人だけでも会社を設立することができます。

まとめ

合名・合同・合資会社の違いは、最初は分かりにくいと思います。

ですが、語呂などで無理やりにでも覚えてから、それぞれの違いを深く知ることで、頭の中に定着していくはずです。
一度覚えて慣れてしまえば、それほど難しくはないと思います。

あと、正直なところ、合名会社と合資会社は、現在はあまり見かけません。
やはり、無限責任社員のリスクが大きすぎるので…

株式会社や合同会社という形態にする方がメリットが大きいというところです。

とはいえ、知識としては覚えておかないといけないですね。
大学受験だけでなく、資格試験でも問われることはあります。

なので、この機会にしっかり覚えておきましょう!