世界中の全ての国が領空を持っています。

基本的に、領空の範囲内では、国は何をしてもよいことになっています。

ですが、領空の高さについては意外と知らない方も多いと思います。

特に最近は、日本でも領空侵犯のニュースがよく報じられ、領空についてしっかりと理解しておいた方がよい状況にあるようです。

そこで今回は、領空の高さについて、そして、どういう場合に領空侵犯となるのかについて、分かりやすく説明しました。

領空の高さはどこまで?

領空の高さを一口に言ってしまうと、

「領空」=「地表から100キロメートルまでの高さ」となります。

この100㎞というのは、大気圏宇宙空間の境目です。

地表から100㎞までは大気圏で、100㎞を越えると宇宙空間となります。

では、なぜ大気圏と宇宙空間の境目が領空とされたのかというと。

国際法上、宇宙空間の領有が禁止されているからです。

1967年に発効した宇宙条約で定められました。
日本も、条約が発効した1967年にすぐさま批准しています。

国際条約によって、1つの国が宇宙を所有することを禁止し、各国が平和的に利用しようという意図があります。

なので、宇宙空間までの高さまでなら、1つの国が自由に使ってもいいよ!ということになります。
その国の主権が及ぶということですね。

その範囲が大気圏であり、領空とされたというわけです。

ただし、宇宙空間までの高さの100㎞というのは、あくまで目安です。
そのときの様々な状況により、宇宙までの距離は変動します。

この100㎞という高さを算出したのは、ハンガリー出身の航空工学者・カルマンです。
カルマンは、宇宙と地球の境界線を定める必要があることを訴え、その高さを100㎞とすることを提案しました。

このカルマンの提案をうけ、国際航空連盟が100㎞と定めました。
以来、宇宙と地球の境界線は100㎞となったというわけです。

カルマンの名前をとり、地表から100㎞までの高さをカーマン・ラインと呼ぶことがあります。

領空の幅はどれくらい?領土や領海との関係は?

今まで述べたとおり、領空の高さは100㎞です。

では、領空の広さ、すなわち領空の横の幅はどれくらいなのかが気になりますよね。

領空の幅も国際法で決まっています。

領空は、国家が領有している領土・領海の上に存在する大気の部分と定義されています。

ここで、領土とは、国家が存在する土地の部分というのは分かるかと思います。

ややっこしいのは、領海ですね。

領海とは、領土の基線から12海里(カイリ)までの範囲の水域となります。
1982年に国連海洋法条約によって決められました。

1海里は1,852キロメートルです。
したがって、12海里は約22.2キロメートルとなり、この範囲が領海となります。

そして、領海をもつ国の場合、その領空は領海を含んだ部分から100kmまでの高さということになります。

と言っても、ちょっと分かりにくいですよね(汗)

そこで、領土・領海・領空の関係を簡単な図にまとめたので、ご参照ください。

領空侵犯になるのはどういうとき?

領空は、当然ですが、国の主権が及びます。
言い換えると、国家は、基本的に領空の範囲内では好きなことをやってもよいということになります。

建物を作ってもいいし、
飛行機を飛ばしてもいいし、
それこそミサイルを発射してもいいし…

ですが、ある国が他の国家の領空を無断で侵すと、領空侵犯となります。
もちろん、国際法違反の行為です。

よくある例が、他の国の戦闘機が自国の領空に侵入したというものです。
ニュースでもよく見ますよね。
それに対処するために、いわゆるスクランブル発進をしたという記事もよく見かけます。

ただし、注意したいのは、領空より上の宇宙空間では、基本的に領空侵犯にはならないということです。

つまり、高度100キロメートルより上の空間では国の主権が及ばないので、他の国が飛行物体をとばしたところで、問題にはならないわけです。

例えば、100㎞より上の宇宙空間で、人工衛星を打ち上げたり、国際宇宙ステーションを作ったりしても、領空侵犯にはなりません。

また、最近何かと騒がしい弾道ミサイルも、領空侵犯にはならないケースがほとんどです。
というのも、短距離の弾道ミサイルでも、余裕で高度100kmはるか上から飛んでくるからです。

とはいえ、ミサイルなので、着地地点が他の国の領土内であったりすると、とんでもない問題にはなりますね。

まとめ

領空の高さは、国際法で地表から100キロメートルと決められています。
100kmより上は宇宙空間となり、国の主権は及ばないことになります。

ただ、最近は宇宙空間でも、国による開発競争が激しいですよね。
色んな目的で人工衛星が打ち上げられたり、宇宙ステーションが作られたり。

その目的が平和的なものならいいのですが、軍事的な目的で利用しているケースはたくさんあります。

今後も国による宇宙空間の覇権争いは激しくなるでしょうし、その流れを止めることもできなさそうです。

できることは、宇宙空間の利用について国際的な取り決めをすることくらいでしょうか。

そのなかで、領空という概念も変化し、領空の範囲が見直され、その高さも変わってくるかもしれませんね。