テレビや新聞のニュースで、「科料」や「過料」という言葉を聞くことがあるかと思います。
どちらも「かりょう」と読み、法律や条例に違反した場合のペナルティーという点では同じです。
ですが、両者には大きな違いがあります。
一口にいってしまうと、科料は刑罰の1つで、前科がつきます。
過料は刑罰ではなく、前科はつきません。
そのため、両者を区別して、「科料」を「とがりょう」、「過料」を「あやまちりょう」と呼ぶことがあります。
法律に詳しい方はよくご存じかと思います。
今回は、法律に詳しくない方でも分かるように、科料と過料の違いについて説明していきます。
科料とは?
まず、科料とは、刑法に定められている刑罰の1つとなります。
現在、刑法に定められている刑罰には、主刑として、死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料の6種類があります。
ただし、2022年の6月13日に、国会で改正刑法が成立し、懲役と禁固が廃止さえ、その二つを一本化した拘禁刑が創設されました。
改正刑法は2025年に施行される予定で、施行された後は、死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料の5種類になります。
また、付加刑として、没収も定められています。
没収は付加罰なので、上記の主刑と一緒でなければ、科すことはできません。
さて、科料は、比較的軽い犯罪に対して科され、金銭の納付を命じられる刑罰です。
早い話が、罪を犯したので、お金をとりますよ!ということです。
金額は刑法17条で定められており、1000円以上1万円未満となります。
科料は刑法上の刑罰なので、刑事事件訴訟法による手続きにより科されます。
検察によって起訴され、裁判所の判決によって科料が言い渡されることになります。
なので、科料をかされると、前科がつくことになります。
科料と罰金の違いとは?
科料と罰金の違いについても触れておきます。
罰金も科料と同じく、犯罪を犯した者から金銭を徴収する刑罰です。
科料との違いは、徴収する金銭の額です。
罰金は、刑法15条で「1万円以上」と定められています。
ただし、金額を軽減して1万円未満も可能とされています。
刑法15条では、金額の上限については記されていませんが、犯罪に応じて、また法律によって、上限額が定めれています。
罰金も科料と同じく刑法上の刑罰なので、刑事事件訴訟法による手続きにより科され、刑が確定したときは前科がつくことになります。
過料とは?
続いて、過料について説明します。
過料とは、形式的で軽微な行政上の義務違反などに対して、金銭の納付を命じられることです。
行政上の秩序の維持に違反したということで、法律学では行政上の秩序罰と呼ばれることがあります。
よく例としてあげられるのが、転入届に関する規定です。
住民基本台帳法では、住所が変更となった場合、新しい住所に転入をした日から14日以内に、所定の事項(転入届)を新住所となる市町村の長に届け出なければならない、と定められています。
14日以内に届け出なかった場合、5万円以下の過料を命じられることがあります。
住民基本台帳法では、転居届や転出届に関する規定もありますが、これらの規定に違反した場合も、5万円以下の過料に処せられることがあります。
その他の例としては、各自治体が制定する「タバコのポイ捨て禁止条例」や、会社法上の登記義務違反などが見受けられます。
過料は刑罰ではありません。
したがって、刑事訴訟法ではなく、非訟事件手続法により地方裁判所によって科されるのが普通です。
刑罰ではないので、前科もつきません。
まとめ
科料と過料の違いを、簡潔にまとめます。
- 科料:刑罰の1種。刑事訴訟法により科される。前科がつく。
- 過料:行政上の秩序維持に違反した場合に、非訟事件手続法により科される。刑罰ではないので前科はつかない。
また、科料と罰金の違いは、納付を命じられる金額の違いで、
- 科料:1000円以上1万円未満
- 罰金:基本的には、1万円以上
となります。
ただし、科料も罰金も刑罰なので、科されると前科がつきます。