2018年の酒税法改正でビール類の税金が段階的に変わります。
2020年の10月から始まり、2023年の10月にさらに改定、2026年の10月に最終的に同じ額に統一されます。
一般的な従来の「ビール」の税金は引き下げられます。
対して、「発泡酒」の税金は引き上げられ、「新ジャンル(第3のビール)」の税金も引き上げられます。
意外とご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ビール類の酒税改定について詳しく説明していきたいと思います。
ビール類の酒税は3段階で改められます
以下に、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(第3のビール)」の税額をまとめました。
350ミリリットル1缶あたりの税額となります。
- ビール:70円(-7円)
- 発泡酒:46.99円(+-0円)
- 新ジャンル(第3のビール):37.8円(+9.8円)
- ビール:63.35円(-6.65円)
- 発泡酒:46.99円(+-0円)
- 新ジャンル(第3のビール):46.99円(+9.19円)
現在の「発泡酒」と「新ジャンル」「第3のビール」系飲料が「発泡酒」に統合されることになります。
- ビール:54.25円(-9.1円)
- 発泡酒:54.25円(+7.26円)
- 新ジャンル:54.25円(+7.26円)
全てのビールの種類が「発泡性酒類」で一本化され、同じ税率が適用されることになります。
図にすると、以下のようになります。
※財務省の資料より作成。
ビールの定義も変わる?
ビール好きの方は、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(第3のビール)」の違いはすでにご存じかと思います。
ですが、この3つの分類がよく分からない方もいらっしゃるでしょう。
実は、今回の酒税法の改正で、今までのビールの定義も新しくなっています。
というわけで、3種類のビールがどういうものか、詳しく説明していきたいと思います。
ビールの定義
酒税法ではビールの定義が定められています。
- 麦芽の使用割合が50%以上
- 副原料の重量の合計は、使用麦芽の重量の5%の範囲内であること
また、使用できる副原料が以下のように決められています。
- 果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮した果汁を含む。)
- コリアンダー又はその種
- ビールに香り又は味を付けるために使用する次の物品
- こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料
- カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
- かんしょ、かぼちゃその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)
- そば又はごま
- 蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
- 花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品
- かき、こんぶ、わかめ又はかつお節
以前の酒税法でのビールには、
- 麦芽の使用割合が65%以上
- 副原料は麦や米、トウモロコシやジャガイモ、デンプンなどに限る
という条件がありましたが、これが緩和されたことになります。
発泡酒の定義
発泡酒にも以下のような定義があります。
- 麦芽の使用割合が50%未満のもの
- ビールの製造に認められない原料を使用したもの
- 麦芽を使用せず麦を原料の一部としたもの
発泡酒も、今回の酒税法の改正で、麦芽の使用割合が65%未満→50%未満と改められたことになります。
また、上述では詳しく触れませんでしたが、発泡酒は麦芽の使用割合によって、税率が3分類に区分されています。
新ジャンル・第3のビール
「新ジャンル」や「第三のビール」は、「その他の醸造酒」と「リキュール」の2つがあります。
- その他の醸造酒(発泡性)
糖類・ホップ・水、および大豆・えんどう・とうもろこし等を原料として発酵させたもの - リキュール(発泡性)
麦芽比率50% 未満の発泡酒にスピリッツを加えたものでエキス分が2%以上のもの
まとめ
今回の酒税法改正で、段階的にビール類の税率が改められ、2026年には一本化されます。
正直、この改正はメーカー泣かせという意見が多いです。
ビールメーカーが1990年代半ばに開発した発泡酒も低価格で人気があったのですが、麦芽比率が50%以上のものはビールと同じ税金がかかるようになってしまいます。
このときの税改正には、「企業の努力を無駄にしている」という批判の声が結構ありました。
そのため、メーカーは麦芽以外の原料を使ったり、発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたりして、「新ジャンル」や「第三のビール」を開発し、2003年に販売します。
何とか高い税金を逃れようと考えたわけです。
そのかいあって、少しずつ「新ジャンル」と「第三のビール」はお茶の間で親しまれるようになり、2020年の上半期では、コロナ渦での節約志向といわゆる「家飲み」の広がりで、販売量はビール市場の全体の約49%を占めるにいたり、約38%を占める従来のビールの販売量を上回りました。
しかし、今回の酒税法改正で、この分野も税金が高くなり、ゆくゆくは全てのビールが「発泡性酒類」として一緒になってしまうわけです。
なので、メーカーと酒税法のいたちごっこという意見があり、今回の改正で人々のビール離れが加速するという見方が多くなっています。