憲法には、「○分の1が必要」という分数や、「○○日以内に」という日数の規定がいくつかあります。

法律や政治に詳しい方は記憶に定着しているものだと思いますが、法律にあまり馴染みのない方は、ややこしくてよく分からないという場合もあると思います。

そこで、この記事では憲法に定められている分数と日数について、分かりやすくまとめました。

特に法学初心者の方にご参考になれば幸いです。

日本国憲法に出てくる分数

3分の2

国会議員の資格争訟の裁判

憲法55条では、国会議員の議席を失わせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要とされています。

両議院の総議員の3分の2ではなく、出席議員の3分の2です。

憲法に「両議院は~」とあることから、両議院で協議して決めるものではなく、衆議院と参議院それぞれ独立に認められた権能です。

秘密会の開催

国会の会議は公開で行うのが原則です。

ただし、憲法57条の1項では、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができると規定されています。

この規定も「国会議員の資格争訟の裁判」と同じように、両議院の総議員の3分の2ではなく、出席議員の3分の2です。

憲法に「両議院の会議は~」とあることから、同じように、衆議院と参議院それぞれに独立に認められた権能です。

国会議員の除名

憲法58条の2項では、国会議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とすると規定されています。

くどいようですが、この規定も前の2つと同じように、両議院の総議員の3分の2ではなく、出席議員の3分の2です。

同じように、衆議院と参議院それぞれに独立に認められた権能です。

衆議院による法律案の再可決

憲法59条の2項では、衆議院と参議院で法律案の議決が異なる場合、衆議院の出席議員の3分の2以上の多数で可決したときは、法律となるとされています。

これも、両議院の総議員の3分の2ではなく出席議員の3分の2です。

ただし、条文から明らかなように、衆議院にだけ認められた権能です。

憲法の改正発議

憲法96条の1項では、憲法の改正の発議には、各議員の総議員の3分の2以上の賛成が必要とされています。

こちらは、出席議員の3分の2でもなく、衆議院と参議院それぞれ独立に認められた権能でもありません。

全国会議員の3分の2以上の賛成が必要となります。

憲法という最高法規の改正なので、その手続きも厳重で慎重に行わなければならないという考えが背景にあります。

過半数

議決に必要な人数

憲法56条の2項では、両議院の議事は、出席議員の過半数で決すると規定されています。

当然、衆議院と参議院それぞれに関する規定となりますが、特別な場合を除いては、基本的に議事は出席議員の過半数で決まることになります。

国務大臣の人数

憲法68条では、国務大臣の過半数は、国会議員から選ばなければならないと規定されています

各国務大臣の任命は、内閣総理大臣の独断が認められていますが、そのうち過半数は国会議員でないとダメということです。

3分の1

議会の定足数

憲法56条の1項では、両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができないと定められています。

衆議院と参議院それぞれに関する規定となりますが、議事を開くためには、それぞれの総議員の3分の1以上の国会議員の出席が必要ということです。

4分の1

臨時会の招集

憲法53条では、いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないとあります。

両議院の総議員ではなく、どちらかの議員の4分の1以上という点が注意ですね。

なお、必要があると判断されれば、内閣が臨時会の招集を決定できます。

5分の1

議会の表決の記載

憲法57条の3項では、出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならないと定められています。

総議員の5分の1ではなく、出席議員の5分の1という点に注意です。

当然ですが、衆議院と参議院それぞれに関する規定となります。

日本国憲法に出てくる日数

衆議院の解散に関わる日数

憲法54条では、衆議院が解散されたときのその後の流れについて、期限となる日数が設けられているものがあります。

  • 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行う
  • 衆議院議員の総選挙の日から30日以内に国会を召集する(→特別国会
  • 内閣は参議院の緊急集会を求めることができるが、このときの措置は、次の国会開会の後10日以内に衆議院の同意がない場合には、その効力を失う

法律案の議決に関わる日数

憲法59条の4項では、衆議院の可決した法律案を参議院が受け取ったあと、国会休会中の期間を除いて60日以内に、参議院が議決しないときは、衆議院は参議院がその法律案を否決したものとみなすことができると定められています。

予算案の議決に関わる日数

憲法60条の2項では、衆議院の可決した予算を参議院が受け取ったあと、国会休会中の期間を除いて30日以内に、参議院が議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とすると定められています。

条約の承認に関わる日数

憲法61条では、「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する」とあります。

すなわち、衆議院が賛成(または反対)した条約を参議院が受け取ったあと、国会休会中の期間を除いて30日以内に、参議院が議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とするということになります。

内閣総理大臣の指名に関わる日数

憲法67条の2項では、衆議院が内閣総理大臣の指名の議決をしたあと、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が指名の議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とすると定められています。

内閣不信任案決議に関する日数

憲法69条では、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職をしなければならないと規定されています。

国会は内閣総理大臣の不信任決議をすることができ、それに対して内閣は衆議院を解散することができ、議院内閣制の特徴的な制度となっています。