日常生活で地べたに座るとき、あぐらをかくことも多いと思います。
現在では一般的に、わりと楽な姿勢で、やや無遠慮な格好と考えられていますね。

ですが、この「あぐら」の由来を探ると、現在の印象とはかなり異なるイメージが浮かび上がってきます。
そのとても意外な事実を、今回お話したいと思います。

「あぐらをかく」の語源とは?

あぐらを漢字で表記すると、「胡座」または「胡坐」となります。

「胡」というのは、昔の中国が異民族のことを呼んだ言葉です。

「座」または「坐」は、何らかの物をのせるために設けられた場所、あるいは座るための場所を意味します。

「胡」と「座(坐)」が合体して「胡座(胡坐)」となったわけです。

しかしながら…

胡座の元々の意味は、実は、今でいうところの椅子や腰掛のことだったんです。
中国から異民族の習慣であった椅子や腰掛という意味で日本にも輸入されたようです。

それが日本でも習慣化され、昔の貴族が使う座席や腰掛も「あぐら}と呼ばれました。

元々椅子や腰掛という意味でしたが、やがて人が地べたに座ることを「あぐら」と呼ぶように変化していったという具合です。

また、「あぐらをかく」の「かく」の意味は、「組む」や「構える」というものであると一般的に解釈されています。

「あぐらをかく」の意味

あぐらをかくの意味については、ご存じの方も多いと思います。

一つは、お尻を地べたにつけて足を組んだ楽な姿勢で座ること、そのものですね。

もう一つは、慣用句として使われます。
自分は何の努力もせずに現在の状態に安住し、ずうずうしく構えることを意味します。

同じような意味を持つ言葉として、

  • 付けあがる
  • 調子に乗る
  • 思いあがる
  • 得意になる
  • 傲慢になる
  • のさばる
  • ふんぞり返る
  • ぬるま湯につかる

などがあります。

昔はあぐらが正式な座り方だった?

現在「あぐら」といえば、比較的打ちとけた楽な姿勢で座ることを指しますよね。
和室での正式な座り方は「正座」であり、あぐらはどちらかと言えば行儀が悪い印象があります。

ところがですよ、実は、昔はあぐらが正式な座り方だったんです。

正座が正式な座り方になったのは、江戸時代の3代将軍・徳川家光の時代あたりからと考えられています。
それ以前、江戸時代の初期までは、日本の男性の正式な座り方はあぐらでした。
それが、正座が正式な座り方になる一方で、あぐらは座禅など特別な場面以外では下品なものと捉えられるようになったということです。

なので、よく戦国武将の肖像画を見る機会があると思いますが、その武将が正座で座っていれば、それは江戸時代に描かれたものと推定されます。
それ以前の時代では、袴をはいていても肖像画はあぐらの姿で描かれていました。
実際に、戦国武将の袴姿の肖像画を色々見てみると、正座で座っているものもあれば、あぐらで座っているものもあるのに気づくと思います。

まとめ

以上、あぐらの語源や由来について述べました。

  • あぐらは「胡座(胡坐)」と書き、元々は椅子や腰掛の意味だった
  • 日本では江戸時代初期まで、あぐらが正式な座り方であった



普段、何気なく思い浮かべる「あぐら」のイメージとはやはり違いますよね。
なかなかに意外な事実ではないでしょうか。