行政庁が法律に基づき、一方的に国民に働きかけ、権利義務を変動させる行為を、行政行為と言います。

今回の記事は、行政行為の効力である、「公定力」「不可争力」「不可変更力」「自力執行力」について説明しました。

公定力

行政行為が法律に違反していたり、不当なものであったとしても、権限のある行政機関や裁判所が取り消すまでは、一応有効なものとして扱われます。

これを、行政行為の「公定力」と言います。

不当な行政行為は瑕疵ある行政行為と呼ばれますが、本来ならこのような行政行為は違法となるはずです。

ですが、違法かどうかの判断は素人には難しいものなので、行政行為の効力を争うには、専門機関による慎重な判断に委ねるべきと考えられています。

したがって、正式に取消しが行われるまでは、有効なものとして効力を発揮することになります。

よく取り上げられる例ですが、税務署長が不当な課税処分をしても、国民は拒むことはできず、強制的に徴収されてしまいます。

課税処分が違法と考えられるなら、訴訟によって処分の取消しを求めなければいけないということです。

ただし、行政行為の違法性が重大でかつ明白な場合は、無効として扱われ、公定力は否定されます。

また、国家賠償請求訴訟や刑事訴訟で、行政行為の違法性を争う場合は、あらかじめ取消し訴訟をして取消判決を得る必要はありません。

国家賠償請求訴訟や刑事訴訟の中で、行政行為の違法性を認定するだけなら、わざわざ行政行為の取消しをする必要はないからです。

不可争力

行政行為に不服がある場合、その取消しを求めて、審査請求や取消し訴訟を起こすことができますが、一定期間が過ぎてしまうと、行政行為の相手側や利害関係人などの私人の側からは、その行為の効力を争えなくなります。

これを、行政行為の「不可争力」と言います。

ただし、一定期間を経過しても、行政庁は自らの職権で行政行為を取り消すことはできます。

また、無効な行政行為は、公定力がないのと同じように不可争力もありません。

不可変更力

行政庁は、一度行った行政行為を自ら取り消したり、変更したりできないとされています。

これを、行政行為の「不可変更力」と言います。

ただし、不可変更力は、行政行為を不服とした私人が審査請求をして、その請求に対して行政庁が下した裁決など、一部のものにしかはたらきません。

「不可争力」のところで述べた通り、原則としては、行政庁は自らの判断で行政行為を取り消したり、変更することができます。

自力執行力

行政行為により義務を命じられた者がその義務を履行しない場合、行政庁は裁判所の判決なしに、自力で強制的に行政行為の内容を実現することができます。

これを、行政行為の「自力執行力」と言います。

「公定力」のところで例をあげた通り、税務署長の課税処分は拒否できず、滞納した者に対しては強制的に徴収することができます。

ただし、自力執行力はどんな行政行為にも認められるものではなく、強制執行する場合には必ず法律の根拠が必要となります。